カルテル損失のみ込んだ海運決算の先行き 不透明要素は欧米の独禁当局
営業利益の段階から上振れぎみの日本郵船は、純利益についても「投資有価証券売却益を追加で上乗せしたことなどもあり、課徴金135億円は吸収した格好」(磯田経営委員)だ。川崎汽船は営業利益の上振れは見込まないが、円安に伴う為替差益が計上されることなどから、やはり純利益段階では課徴金57億円を吸収する予定だ。
さらに、リーニエンシー制度により課徴金を免れた商船三井は、コンテナ船が他社よりも低調で営業利益が下振れしそうなものの、米国のコンテナターミナル子会社株を売却したことにより210億円の特別利益を計上。2013年度の純利益は従来想定の500億円から、570億円に上振れる見通しとなっている。
欧米当局も調査中
足元ではひとまず、カルテル課徴金を“のみ込んだ”形の海運各社。このまま逃げ切れるのか。実は今回、公取委が事前通知した課徴金総額220億円は、あくまでも日本からの輸出車輸送の部分のみ。海外から日本への輸入車輸送や、第三国間での輸送は含まれない。
自動車船カルテル疑惑は欧州や米国の当局も調査中だ。公取委が独禁法違反を認定した以上、欧米でも同様の判断がなされる可能性が高まった。その場合、日米欧合わせた課徴金総額は、日本での220億円の少なくとも2倍程度、400億~500億円規模に上るとの見方がある。
そうなると、日本郵船や川崎汽船はもちろん、日本では課徴金が免除されたとみられる商船三井も、欧米で同じ措置を受けられるかどうかは保証のかぎりではない。
逆風から順風へと徐々に環境が好転しつつある海運業界。が、カルテル問題は2013年度のみならず、来2014年度以降もしばらく、大きな不透明要因として残る可能性がある。
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