10年ぶりのドイツ景気後退と緊縮主義の終わり 欧州の「今」はどうなっているのか
悲惨な政治・経済の中、ECBはどう動くだろうか。8月22日に公表されたECB政策理事会(7月25日開催分)の議事要旨によれば、補完的ないし相乗的な効果を企図して「数々の選択肢をパッケージとして見なすべきである」とのフレーズが目を引いた。
例として「利下げと資産購入といったコンビネーションが個別の選択肢を連続的に出すよりも効果的である」などと記述されていることから、9月12日の政策理事会では既にコンセンサスである「預金ファシリティ金利のマイナス10bps引き下げ」に加え、「拡大資産購入プログラム(APP)の再開(以下APP2)」、つまりQE再会などもセットで打ち出される可能性が出てきたといえる。
すでにECBはマイナス0.40%という日銀よりもさらに深いマイナス金利を当座預金(と預金ファシリティ)にチャージする状況にあるため、近い将来において「金利」ではなく「量」の議論にシフトせざるを得ないことは目に見えている。APP2は遅かれ早かれ検討する羽目になろう。
あまりにも低い域内の金利
だが、APP2導入も容易ではない。域内国債の金利水準が足元であまりにも低いからだ。現状、ドイツ・フランス・イタリア・スペインの4大国に加え、ベルギー、オランダ、オーストリアといったセミコア国の国債までもがマイナス圏に水没しており、現時点でプラス金利を辛うじて維持しているのはPIGSで総称される南欧4か国(ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン)ぐらいだ。スペインに至っては0.2%弱と概ねゼロ金利付近であり、水没は時間の問題という雰囲気も漂う。
現時点で米10年金利は1.5%だが、同年限についてはイタリアが1.3%、最も高いギリシャでも1.8%である。政治も経済も悲惨な状況にあり、財政規律の行方が不安視されるイタリアでもこれほどの低金利なのだ。
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