「値段が高い=いい物」と判断する人の大誤解 意外と身近にある「経済学」の超基本知識

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企業の不祥事や従業員の不正などが発覚したとき、私たちは倫理観から非難をしがちです。でも「情報の非対称性を利用して、自分に利益になることをしたい」という人の気持ちはゼロにはできません。それなら、そもそもモラルハザードが起きないような仕組みをつくればいいと、発想を変えることができます。

情報の非対称性があることで起きる問題には、次の2つのパターンがあります。

① 監視できないことで(その結果として)問題が起きる「モラルハザード」
② そもそも取引する前に問題が起きる「逆選択」

モラルハザードをゼロにするのは困難

モラルハザードとは、保険契約でよく聞かれる言葉です。「自動車保険に入っているから」と危険な運転をする、「旅行保険に入っているから」と旅先での荷物管理をおろそかにするといった考え、行動を指します。また、企業や組織が倫理や責任感を欠いて、自らの利益追求に走るといった状態も指します。

道徳や倫理観でモラルハザードをゼロにするのは困難です。それなら、そうならない仕組みをつくってしまうほうが早いかもしれません。

例えば、ドイツは信用改札方式を採用しており、切符がなくても電車に乗れます。その代わり、違反が見つかると高額な罰金を払わなければなりません。このように、不正をすると高くつくので決まりを守ったほうが合理的、という仕組みが浸透すれば、モラルハザードの数は減るかもしれません。

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情報の非対称性があることで起きる問題には、「モラルハザード」のほかにもう1つ「逆選択」があります。

例えば、病気があるのにそれを隠して医療保険に加入したら、保険会社は、健康に自信のない人に逆選択されたことになります。また、悪徳業者が、住宅の知識があまりない人に欠陥住宅を販売すれば、買い手は業者に逆選択されたことになります。逆選択とはこのように、情報の非対称性を利用して、自分だけに都合のいい取引をしようとすることです。

逆選択を防ぐのに役立つのは、第三者の意見です。幅広く意見を聞いてみて、自分で判断するのがいいでしょう。このように経済学は意外と身近にあるものなのです。

崔 真淑 エコノミスト

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さい ますみ / Masumi Sai

一橋大学大学院博士後期課程在籍。東証一部シーボン社外取締役。グッド・ニュースアンドカンパニーズ代表取締役。日経COMEMOキーオピニオンリーダー。2008年に神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)へ入社。アナリストとして資本市場分析に携わる。債券トレーダーを経験したのち、2012年に独立。2016年一橋大学大学院(MBA in Finance)修了。2017年から一橋大学大学院イノベーション研究センターに所属。現在は、経済学を軸に、経済ニュース解説、企業の意思決定のメカニズム(コーポレートファイナンス)、資本市場分析を得意とするエコノミストコンサルタントとして活動。また、若年層の経済・金融リテラシー向上のため、東京証券取引所のPRコンサルティングなども手がける。

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