「値段が高い=いい物」と判断する人の大誤解 意外と身近にある「経済学」の超基本知識
「1つを選ぶと、ほかは選べない」ことから逃れられないことはわかりましたが、選ばなかったことで、どのくらいのものを失うのかが気になるところです。時間やお金といった有限な資源を有効活用したいとき、「機会費用」という考え方が役に立ちます。
例えば、ある企業が立地のいい場所に不動産をもっている場合、自社ビルとして使うことのほかに、自社は少し賃料の安い場所に引っ越して、そこを賃貸不動産として活用して賃料収入を得るという選択肢もあります。
未来のシミュレーションとして、ほかの選択をしていたらどうなるのかということも、過去を振り返ってほかの選択をしていたらどうだったのか、ということも価値ある検証です。機会費用は、これからの戦略に活かすことも、過去を振り返ることにも使えるのです。
高いモノ=いいモノ?
商品知識がないとき、私たちは「高いモノならいいモノに違いない」と思ってしまいがちです。しかしながら、「情報の非対称性」について学ぶと「高いモノが、必ずしもいいモノであるとは限らない」ということが理解できるでしょう。
初めて行くお店や高級店で買い物をする際に、何となく不安を感じることがあります。これは、自分が商品について詳しくないのに対して、店のスタッフは、商品知識はもちろん、在庫やセールの日程といった豊富な知識をもって接客しているという、圧倒的な情報の差に原因があるともいえます。情報を豊富にもっている販売員と情報に乏しい顧客の間には、情報の非対称性があるのです。
「値段が高いモノはいいモノ」と判断してしまうのも、情報の非対称性によるものです。自分が情報弱者であるときは、知識がないために、物なら高い値段、人なら肩書や学歴が高いことが対象を評価する判断基準になってしまうことがあります。
情報の非対称性は、株主と経営者の間にも当てはまります。株式会社の経営者は株主から経営を任されている存在です。しかし、株主に比べて多くの情報をもつ経営者側は、不正を行う誘惑に駆られがちです。
情報の非対称性を利用して、自分だけに都合のいい取引をしようとする逆選択が横行すると、お互いが信用できなくなり、やがて市場全体が非効率に陥ってしまうでしょう。対策として、情報優位者がコストをかけて自ら情報を開示して、取引相手に安心してもらうという手段があります。
生命保険や医療保険に加入するときに書く告知書は、保険会社に対するシグナリングです。企業経営にもシグナリングは欠かせません。企業の経営陣が自らを監視する社外取締役や監査役を設置する、IRで情報発信をするのも、株主や投資家、取引先、社員といったステークホルダー(関係者)に対するシグナリングといえます。
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