周:稼げる男性は減ってきていますが、男女ともに意識が追いついていません。そのため、女性側に長期的なキャリアプランを立てるよう促す必要があると思います。
就業選択行動は、経済的には賢い選択がしづらい領域です。目先の「両立どうしよう」とか、「疲れた」という感情、周りの環境に流される心理、あるいは税優遇があるからといった理由で働くべきかどうかを決めてしまいやすい。
でも生涯賃金では2億円損するかもしれない。そうしたマッピング情報を提供することが必要だと思います。仕事をやめるパターン、やめないパターン、何年で復帰するかというパターンなどはデータで予見ができるので、情報を与えることで、そのときの勢いではなくプランニングしてほしいです。
また、復帰のタイミングは「子どもが小学生になってから」とか「(小学校)高学年になったら」というパターンが多く、ちょっとブランクが長すぎます。労働市場の価値が大幅に落ち込んでしまうので、そこまで待たずに産休後1、2年程度で復帰できないかと思います。
中野:小学校もPTAなどで母親の献身が前提になっている側面があり、こういったところを変えていく必要もあると思います。女性の意識改革だけではなく、夫婦でプランを立てて、男性が家事や育児をもっと担うようにならないと、女性にばかり負担がかかりますね。
男女ともに柔軟な働き方ができる体制も必要ですよね。人手不足や新サービスの登場などで、再就職の選択肢や働き方の多様性も少し増えてきたのではないでしょうか。私の本ではパートタイムで総合職的な仕事をする事例やシェアリングエコノミー・ギグエコノミーなどの可能性についても触れています。もちろん保障面でまだまだ課題はあり、スキルを身につける方法なども含めて整備が必要な領域でもありますが。
ブランクを空けるのは得策ではない
周:中途採用も若干増えてはいますが、やはり条件がいいのは圧倒的に新卒採用です。だから苦しい時期があっても踏ん張ってほしい。同じ会社でなくても、何らかの形でキャリアに継続性があることが重要です。労働市場に居続けることが大事。ゼロになってしまって再スタートするよりも、少し働き方を変えながらも、あとから追いつくことのほうが簡単なんです。企業側としても厳選採用でとった女性に辞められると痛手です。非正規でも同じ分野で仕事を積み上げることで、人的資本価値は高まります。
中野:新卒一括採用の仕組み自体が見直されるべき面もあると思いますし、現状で新卒採用で溢れ落ちてしまうケースや時期によって地元でちょっとした仕事をして生活していきたいというようなケースもあると思うので、 やり直しがきく社会にしていく必要がありますね。
男性を含めた働き方改革も必要ですね。正社員で長時間労働、転勤ありか、そうでなければ低処遇の非正規かの二極化ではなく、前回の鶴光太郎先生のインタビューで議論したようなジョブ型正社員も選択肢になりえます。
周:企業内部の働き方改革は必要ですね。子育て期間中は短時間勤務制度を使って対応する女性が増えていますが、それによって管理職登用が遅れたり、責任の軽い仕事に配属されるようになったりするケースが報告されています。
それよりも働く時間や場所に柔軟性を持たせて、保護者会や子どもの病気などのときにきちんと休めるよう、働き方を内部で変えていくほうが望ましいかと思います。ジョブ型正社員は、その具体形の1つとも言えます。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら