日経平均株価が2万円を大きく割り込む「必然」 世界中で「さらなる正常化」が進行している
そもそも、これまで当コラムで何度も述べてきたように、米中間の通商交渉を巡る溝は深く、全ての品目ではないとしても、9月1日からの関税引き上げに対し、中国は深い不快感を覚えており、何らかの報復措置(レアアースについての対米輸出の制限など)を打ち出すといった観測もある。
今回の米政権の追加関税適用延期措置が、決して手放しで楽観できるものではない、という実態をしっかり踏まえた結果、世界の株価の上昇が抑制的であったとすれば、それは市場の判断が正常で適正なものであり、歓迎すべき動きであったと解釈できるわけだ。なお、筆者は、株価が余り上がらなかったことが好ましい、と主張しているわけではない。あくまで実態の強弱に応じて、市場が適切に反応したことが良かったのではないか、と言っているのである。
さらなる実態悪を評価した「正常化」も進展
続いてその翌日の8月14日(水)には、アメリカの株価が大きく下振れした。NYダウ工業株は前日比800ドル(約3%)安と、下落は大きなものとなった。この株価下落の説明としては、アメリカ国債で測った長期金利が低下し、特に10年国債と2年国債の利回りが逆転したため、債券の投資家が長期的に景気の先行きについて警戒的であるとの見方から、アメリカ経済の後退懸念が広がったため、とされている。
ただ、これも当コラムで何度も解説してきたように、アメリカ経済の悪化は以前から進んでいるものであり、いきなり景気が悪化したわけではない。たとえば鉱工業生産は、世界需要の後退を反映して、昨年12月をピークに、減少基調を概ねたどっている。住宅着工は月々の振れが大きいが、昨年1~5月でピーク圏を形成し、弱含みだ。16日に発表された7月分の住宅着工件数は前月比で4.0%減少しており、3カ月連続のマイナスを記録している。
他にも悪化傾向を示すアメリカの経済指標を挙げていると切りがないが、かなり前からアメリカの経済も企業収益も悪化し続けている(S&P500採用銘柄の1株当たり利益は、1~3月期も4~6月期も前年比減益で、7~9月もアナリストの予想平均値で減益が見込まれている)。
それに対して、7月途中までアメリカの株式市場は過度の楽観に包まれ、主要な株価指数は史上最高値を更新していた。こうした楽観に行き過ぎた市場が、景気や企業収益実態の悪さを「正しく」評価する方向に向かい始めており、14日の株価の大幅下落は、そうした「正常化」が最大の要因であったと考えるべきだろう。つまり、「なぜ14日の株価はこんなに下落しなければいけなかったのか?」という問いに対する正しい答えは「それまでの株価が上がり過ぎだったから」だろう。
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