非正規公務員の不条理、安月給で昇給・昇進もないが、責任は正規並みも《特集・自治体荒廃》

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 千葉県佐倉市の八つの公立保育園では、正規職員60名弱に対して、臨時職員は約80人に上る。臨時職員の雇用期間は6カ月。地方公務員法で更新は一度しか認められていないため、1年が経過すると1カ月の空白期間を経て、再び6カ月単位で雇用される。その臨時職員の保育士のうちおよそ10人が保育園でクラス担任を受け持っている。

臨時職員にとって、1カ月の空白期間は、社会保険(健康保険や厚生年金)が適用されないため、国民健康保険や国民年金に加入し直さなければならない。手続きが間に合わず、無保険状態になることもある。

消費生活相談や配偶者暴力相談に携わる東京都の相談員は、全員が非常勤職員だ。相談員は何年働いても昇給がなく、ボーナスも手当も一切ない。そのため、20年の大ベテランと新しく入ってきた相談員が同じ給料で働いている。

このように労働条件が劣悪である一方、東京都は07年12月に要綱を改定し、「原則最長5年での雇用打ち切り」を打ち出した。そうした中で「展望のない不安定な職場から、早めに転職したい」という人が続出。相談業務に支障が出ているという。

非正規公務員であっても、労働時間が正規公務員のおおむね4分の3以上の場合には、社会保険加入の義務がある。ところが、加入を避けているかに見える自治体もある。

東京都江戸川区では06年度当時、400人を超す臨時職員が勤務していた。そのうち約300人が1日6時間勤務だった。6時間働く場合、「4分の3」に該当するため、社会保険の適用が必要。だが、江戸川区は6時間勤務の職員を社会保険に加入させていなかったことが判明。職員組合から是正を求められた。

ここで江戸川区は驚くべき対応をする。大半の臨時職員の勤務時間を1日5時間に短縮したのだ。“時短”によって勤務時間を正規職員の4分の3以下にすることで、社会保険料を支払わずに済ませたのだ。

非正規公務員は、出産を理由にした解雇にも遭遇している。ある地方都市では、学校図書館司書の非常勤職員が出産後の職場復帰を求めたものの、自治体が「半年ごとの雇用」というルールを持ち出して、一方的に解雇した。出産を理由とした解雇は労働基準法に違反するが、自治体側は「自らのルールに基づいて採用しない」の一点張りで押し通した。

総務省の調べによれば、自治体で働く臨時・非常勤職員は約50万人に上る。そして彼ら非正規公務員は一般の労働者が認められている権利の多くを剥奪されている。

行財政改革の中で、非正規公務員の数は増え続ける一方だ。国や自治体はこの現実を直視し、早急に是正策を打ち出す必要がある。「官製ワーキングプア」の放置は許されない。




(週刊東洋経済)
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