「糖質制限」極端なやり方が健康に害をなす危険

体重は減っても死亡率が高まる可能性がある

ごく一部の医師は、糖質の摂取が肥満や老化の原因であり、糖質制限によって肥満を防ぎ、老化を遅らせるばかりでなく糖尿病などのさまざまな病気を予防できると主張しています。極端な場合、糖質割合10%台の食事がすすめられていることもあります。厚生労働省の提示する50~65%とかなり差がありますね。どちらが正しいのでしょうか?

結論から言うと、私は極端な糖質制限食をおすすめしません。うまく行わないと長期的にはかえって健康を害する危険性がある一方で、利益がはっきりしないからです。

極端な糖質制限食のリスク

2018年に発表された研究では、45~64歳の約1万5000人のアメリカ人を面接し、食事摂取頻度を調査して25年間追跡し、炭水化物の摂取割合別に亡くなった人を数えあげました(※2 Seidelmann SB et al.,Dietary carbohydrate intake and mortality:a prospective cohort study and meta-analysis., Lancet Public Health. 2018 Sep;3(9):e419-e428.)。性別、年齢、人種、糖尿病の有無、喫煙の有無などの要因も同時に調べて補正しています。

これは「コホート研究」という手法です。薬の臨床試験でよく使われる「ランダム化比較試験」に比べるとエビデンスレベルはやや落ちますが、食事の影響を長期間にわたって評価するにはコホート研究が信頼できます。

その結果、総摂取カロリーに占める炭水化物の割合が50~55%のときに最も死亡率が低く、それより多くても少なくても死亡率が高くなることが示唆されました。炭水化物の摂取割合と死亡率の関係をグラフにすると、上のようにU字型になります。厚生労働省の提示する50~65%と近い数字です。

この研究では、炭水化物摂取割合が10%台という極端な糖質制限をしている人は少なく、極端な糖質制限については直接的にはよいとも悪いとも言えません。

しかし、グラフのU字型の左側、炭水化物の割合が20%くらいまでは死亡率が上昇していることを見れば、さらに炭水化物を制限すれば体によいとは考えにくいでしょう。

また、複数のコホート研究を統合したメタ解析でも同様の傾向で、「高すぎる炭水化物摂取割合(70%を超える)と「低すぎる炭水化物摂取割合(40%未満)」は、高い死亡率と関連していました(※2)。

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