日本企業でも増えている「イマドキ肩書」の威力 「営業第一部部長」「第二課課長」はもう古い?

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エバンジェリスト

IT業界で時々見かける職種に、エバンジェリストという役職があります。エバンジェリストとは、もともとキリスト教の伝道師を指す言葉ですが、IT業界においては、新しいテクノロジーや、そのトレンドをユーザーや市場にわかりやすく説明し啓蒙を図り、その普及に向けて努めることが任務の仕事です。何かのテクノロジー専門の場合には、テクノロジー名+エバンジェリストとして肩書にするケースが多いようです。

ドロップボックスが生み出した新職種

コミュニティマーケター

自社の商品やサービスのファン同士が結びつくコミュニティーづくりを仕掛ける、新しいタイプのマーケターです。イベントなどファン同士が語り合える場を設定することで、商品・サービスへの愛着をさらに高めてもらうとともに、SNSなどを通じて周囲に商品・サービスの魅力を広めてもらいます。

コミュニティーとの対話から得られたファンの意見を、商品改良や販売促進に役立てることもあります。クラウドサービスでトップシェアをひた走るアマゾン・ウェブ・サービスの躍進の裏にも、1万人を超えるユーザーコミュニティーの存在がありました。

グロース・ハッカー

グロース・ハッカーとはシリコンバレーで生まれた新しい職種です。2010年にアメリカのドロップボックスのシーン・エリス氏が発案した肩書といわれています。会社の製品やサービスを飛躍的にグロース(成長)させることを使命としていて、新たなアイデアでマーケティング領域を拡大し、事業を加速します。

ウェブサービスやアプリの業界に多く見られる職種で、マーケターとエンジニア両方のスキルを駆使して実行するケースが増えてきました。SNS連携や友人招待の仕組みを巧みに使い、ユーザー数を短期間で急速に増やしたドロップボックスの手法は、グロース・ハックの代名詞的事例としても有名です。まさしく起業家のようにタフな精神で、新しいイノベーションを推進する任務です。

さて、このような新興職種やユニークな役職名には、いくつか共通点が見られます。それは、①ビジネスの成長に不可欠であること、②ミッションが明確であること、そしておそらく最も重要な点として、③やり遂げるには高い専門性やプロフェッショナリズムが必要であることです。それを名称で表すことで新しい役職が生まれているのです。

もし、あなたの会社でユニークな肩書を取り入れたいとなった場合、大切なことは、それぞれの役割の目的と責任を明確にしたうえで肩書を考案することです。格好いい肩書にすることばかりにこだわらず、安易な略称や業界用語の使用を避け、何の仕事をするのか直感的に伝わるシンプルな言葉を使うよう心がけましょう。きっと社員のやる気を引き出せるはずです。

小谷 敦子 コーナーストーンオンデマンド マーケティングシニアディレクター

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こたに あつこ / Atsuko Kotani

日本ではまだ根付いていないタレントマネジメント(人材マネジメント)の市場をつくるべく、コーナーストーン社でマーケティングを統括。外資系IT業界でのマーケティングやコミュニケーション、コンサルティング分野での20年にわたる経験を持つ。

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