同じく大手の1つに数えられるのがギリアド・サイエンシズ(GILD)。1987年の創業以来、HIV/エイズ、B・C型肝炎ウイルスなどの感染症治療・予防薬の開発を手がけ成長してきた。直近は、これまで売り上げの主力だったC型肝炎治療薬の「ハーボニー」「エプクルーサ」が大きく減少する一方、「ゲンボイヤ」「ツルバダ」などのHIV治療・予防薬が成長し、2018年は抗HIV関連が売上高の3分の2を占めるまでに拡大した。なお同社は、インフルエンザ治療薬として有名な「タミフル」の特許を保有している。
神経疾患分野の先駆者であるバイオジェン(BIIB)は、主力の「テクフィデラ」のほか、「アボネックス」「タイサブリ」という多発性硬化症治療薬を持っている。これらの治療薬は日本ではエーザイと共同で販促を行っている。また脊髄性筋萎縮症治療薬の「スピンラザ」が前年比倍増と急成長しており、次の主力として期待が高い。
中堅どころではアレクション・ファーマシューティカルズ(ALXN)やバーテックス・ファーマシューティカルズ(VRTX)を取り上げよう。前者は超希少疾患の治療薬の開発に専念しており、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の補体阻害剤「ソリリス」が拡大を続け、収益を支えている。同じくPNH治療薬の「ユルトミリス」が2018年12月に食品医薬局(FDA)の承認を受け立ち上がってきた。
後者は遺伝性の難病の1つである嚢胞性線維症治療薬の開発に特化した企業で、主力の「ORKAMBI」「KALYDECO」に加えて、「SYMDEKO」が3番目の柱として育ってきた。
M&Aは日常茶飯事
日本では昨年、武田薬品工業の製薬大手シャイアー買収が大きな話題となった。約6.8兆円という日本企業による買収額としては過去最大ということもあって大きくクローズアップされたが、この業界ではM&Aは日常茶飯事といっても過言ではない。前述のとおり、新薬の研究開発には多額の資金や長い時間がかかるため、資金力がモノをいううえ、有望なパイプラインをいくつも持っていることが有利だからだ。
今年に入ってから、大型のM&Aが相次いで発表された。
まず1つが、大手ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)によるセルジーン(CELG)買収。ブリストル・マイヤーズ・スクイブは1989年にブリストル・マイヤーズ社とスクイブ社が合併して誕生した医薬品企業で、腫瘍、心臓血管、免疫分野を主領域として事業展開している。主柱はメラノーマなどの免疫治療薬「オプジーボ」と抗凝固薬「エリキュース」で、この2つで売り上げの過半を占める。
一方、買収される側のセルジーンはがんや免疫・炎症性疾患の治療薬を手がけており、主力の多発性骨髄腫治療薬「レブラミド」のほか、同「ポマリスト」や乾癬治療薬「オテズラ」を保有している。ちなみにセルジーンは、2018年にCAR-T細胞療法と呼ばれるがん治療の先端技術を持つジュノ・セラピューティクスを買収している。
今回の買収によりブリストル・マイヤーズ・スクイブは、がん治療薬の領域が拡大するほか、近い将来発売が予定される6つの新薬候補を獲得、ここから150億ドル以上の売り上げが期待できるとしている。
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