6月18日、フェイスブック(FB)が新しい暗号通貨「Libra(リブラ)」を使った金融サービスを2020年にスタートさせることを発表した。ブロックチェーン技術を活用して、迅速かつ低価格の決済・送金システムを構築し、27億人のフェイスブック利用者に加え、途上国を中心に既存の金融システム外にいる約17億人を取り込もうとする壮大な試みだ。
すでにビザやマスターカード、ペイパルといった決済業者のほか、ウーバーやリフト、イーベイ、スポティファイなど28の企業・団体が加盟しており、運用がスタートすればその数は100程度に増えると見込まれている。
暗号通貨「Libra」の最大の特長は、中央銀行が発行する通貨や低リスクの公債で組み合わせた資産を裏付けとして持つことにある。これにより価格変動を抑え、その価値を安定させるとしている。
この発表に対し、各国の金融当局や多くの金融機関が、セキュリティーやマネーロンダリング、個人情報保護などの懸念を表明している。
裏を返せば、それだけインパクトを与える内容だったということだろう。
決済システムの双璧、ビザとマスターカード
金融の世界では、テクノロジーと融合したフィンテックにより、さまざまなイノベーションが生まれ、これまでにはなかったサービスが続々と登場してきた。そのなかでも、フィンテックの影響が最も及ぶのが決済の世界。そのトップ企業がビザ(V)だ。
1958年、バンク・オブ・アメリカのバンクアメリカード発行を起源とし、1976年にVISAと改称した同社が上場したのは、それから30年以上もたった2008年3月のこと。その後急速な拡大を続け、上場時に別会社となったビザ・ヨーロッパを2016年6月に買収してブランドを統一し現在に至っている。
世界200以上の国と地域に展開し、提携する金融機関は1万5900に及び(2018年9月末)、また33億枚以上のカードが発行され、5390万もの店舗で利用されている(2018年6月末)。2018年9月期の支払総額は11.2兆ドルと、前年度比で1割近くも増加した。
われわれもほとんどと言っていいほど保有している「VISA」のロゴ入りクレジットカードだが、これはビザが発行しているカードではない。同社が提供しているのはカード決済システムだけであり、カードの発行も加盟店の管理も行わず、したがって信用リスクを取ることもない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら