こうしたロボ・アドバイザーが提供するポートフォリオの大半は、ETFが主体となる。現在、ETF市場は世界的な拡大が続いており、調査会社ETFGIのデータによると、2019年6月末の全世界の市場規模は5兆4890億ドル(約593兆円)に達する。このうちアメリカは3兆8670億ドル(約418兆円)と全体の7割を占めるETF大国だ。
ETFの運用でトップを争うのが、バンガードとブラックロック(BLK)。ただバンガードは非上場企業のため、ここではブラックロックを取り上げる。同社は世界最大の独立系資産運用会社で、2019年3月末の運用資産残高は6.5兆ドルに達する。
2009年にイギリスのバークレイズの資産運用部門バークレイズ・グローバル・インベスターズを買収したことで、一気に世界トップの地位に上り詰めたが、このとき「iShares」ブランドのETFを獲得している。
全米最大の不動産情報サイトを運営するジロー・グループ(ZG)は、12のブランドで不動産の買い手と売り手、貸し手と借り手を仲介するプラットフォームを運営するほか、各種の情報提供、不動産業者向けの管理サービスなども展開している。2018年にはオンライン住宅ローンのモーゲージ・レンダーを買収し、住宅ローン事業も含めたワンストップサービスの強化を図っている。
個人、中小企業向けサービスにフィンテックは浸透
お金を必要としている人がお金を手に入れる場合、これまでは金融機関から融資を受けるというのが一般的な方法だったが、審査が厳しく手間暇がかかるなど、いくつもの高いハードルを乗り越える必要があった。しかし、お金を必要としている人に投資家がお金を提供するソーシャルレンディングという仕組みが登場し、とくに欧米では急激な勢いで拡大している。とりわけ注目されるのは、金融機関が介在しないP2Pの形態だ。
ソーシャルレンディングのトップ企業であるレンディング・クラブ(LC)は、2006年に創業し、借り手と貸し手をつなぐP2P融資で成長してきた。オンラインプラットフォームを活用することで、迅速かつ低金利のローンを提供する一方、投資家には従来よりも高い利回りを提供するとともに、与信などの手続きの自動化を実現している。
資金需要はあるが金融機関からの融資が不足している中小企業向けにオンラインで融資を提供しているのがオン・デッキ・キャピタル(ONDK)だ。こちらも2006年の創業で、現在までにアメリカ、カナダ、オーストラリアで700社以上の企業に総額100億ドル以上の融資を行っている。データ分析を取り入れ、審査から融資実行までを短時間で行うというビジネスモデルに特長がある。
中小企業向けには、融資だけではなく会計管理でもフィンテックが浸透してきている。インテュイット(INTU)はその代表的な存在だ。中小企業向けクラウド会計ソフト「QuickBooks」、個人資産管理ツール「Mint」、個人向け確定申告ソフト「Turbo Tax」が同社の主軸サービスで、いち早くクラウド化に転じたことでライバル企業に先行した。
このところ、フィンテックに関しては中国の台頭が目覚ましいが、アメリカもまだまだ衰えてはいない。KPMGが公表した世界のフィンテック企業のリーディング50社のうち、13社がアメリカ企業だ(中国企業9社、日本企業は1社)。
例えば、学生ローンを中心とする個人ローンのSoFi、インシュアテック(保険+テクノロジー)の先駆で医療サービスにも踏み出しているオスカー・ヘルス、無料アプリを使い株式取引や銀行口座を提供するロビンフッド、オンライン決済のストライプ、モバイルで家財保険を提供するレモネードなど、実に多彩な顔ぶれとなっている。
すでに日本でビジネスを始めている企業も少なくない。これらの企業は今後、IPOで株式市場に登場する可能性も高いだけに要注目だ。
冒頭の「Libra」に戻ろう。公表されたペーパーによると、2020年前半とされる運用開始までに残された多くの課題を解決するとしている。現時点ではその成否を予想するのは難しいが、さまざまな分野でテクノロジーと融合した新しいサービスが生まれていることと合わせて考えると、フィンテックが一段進んだ次のステージに移りつつあることは間違いない。
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