食品大量廃棄を「とんでもない」と騒ぐ人の盲点 経済合理性の観点でとらえたらどう見える?

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松尾:食品がたくさん捨てられている状況が「理想状態」ではないことはわかります。ただ他の業界、例えば建材とか自動車部品なども生産の過程で少なからず廃棄があります。それはなぜ問題とされないのか。

生産の過程における無駄はどこにもあるし、過剰生産もたくさんある。食べ物だけが問題とされるのは、昔から「食べ物は残しちゃいけない」という文化とあいまって、わかりやすい、感情に訴えかけやすいからですよね。

でも、それだけじゃないですか。経済合理性を追求する現状のシステムからすると、それを問題とする必要があるのでしょうか。

廃棄処分される食料品(写真:リディラバジャーナル)

安部:経済合理性の観点から、そうした捉え方があるのはわかります。ですが、あらゆる問題が解決されていて、社会としてのシステムが最適化されている状態を目指してもいいじゃないですか。

だから僕は、建材で膨大な量の部品が捨てられていることも問題だと思っています。それは社会システムとして、明らかに理想状態と現状に乖離があり、最適化される必要がありますから。

経済を「最適化」させるためのロス

松尾:フードロス含めて、多くのことが経済的にはすでに最適化されていると僕は思っています。構造上、ある程度のロスが出るのは仕方がないわけで。

それをメディアがこぞって報じることにより、大きな問題であるかのように見せられているという負の面があるのではないかというのが僕の認識です。

つまり、メディアがエンターテインメントとしてフードロスという「社会問題」を扱っている側面があるんじゃないかなと。

安部:確かに、そうした報道があることは事実だし、それはそれで問題だと思います。でもそれは、フードロスという問題の取り上げ方にもよるんじゃないかと思うんです。

おそらく松尾さんが言っているのは、アフリカの飢餓の問題などと結びつけてフードロスが扇情的に報じられていることではないでしょうか。

僕もそれは意味がないと思います。日本のフードロスをアフリカの国々に届けられるかといったら無理ですし。

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