食品大量廃棄を「とんでもない」と騒ぐ人の盲点

経済合理性の観点でとらえたらどう見える?

松尾:そうですね。

安部:一方で日本の生産流通で見れば、食べ物を無駄にすることによって生じる弊害はあるわけです。製造や流通に使われた資源を浪費したり、ロスした食べ物を廃棄するのは温室効果ガス排出にもつながりますから。

何を「社会問題」とするのか?

松尾:そうしたことも含めて、フードロスはすでに社会システム上で最適化された結果です。根本的には消費者がより新しいもの、きれいに見えるものを志向してしまう、また店に欠品があると顧客はリピートしなくなるところに原因があり、それが変えようがない以上は仕方ないと思っています。

フードロスは一例ですが、多くの報道で社会問題をエンタメ化していると感じることが多い。一方では感情を喚起し、もう一方では解決しましょうと主張するマッチポンプになっていると思います。

仮にリディラバが社会問題だとして取り上げるのならば、そういった社会問題の背景にある要因を、いかに因数分解できるかじゃないですかね。

安部:僕らはまさに因数分解をしていて、「構造化」という言い方をしています。フードロスの問題も取材していて感じたのは、いま以上に最適化できる余地は大きいということです。

そうした情報を「リディラバジャーナル」で発信しているんです。「社会問題とは何か?」ということから定義する議論が必要だというのは、僕もそのとおりだと思います。

松尾:社会問題は、メディアが恣意的につくれてしまう側面がありますからね。

安部:そうですね、それが社会問題かどうかは、結局は個々人の認識論になってきます。社会問題としての社会合意を得るうえでは、「社会問題における『社会』とはそもそも何か?」といった話から整理しないといけない。

同時に、「何がどのように問題なのか?」も定義する必要がある。本来は個々の社会問題で、そういう丁寧な作業が必要だと思うし、僕らのメディアでもその議論を丁寧にやるように気をつけています。

松尾:このあたりは大変重要ですよね。そうしたことをすっ飛ばして、メディアがあおることであたかも社会問題に仕立て上げられているという問題がある。それが、僕はおかしいと思うんですよね。

安部:ある事柄について、「理想状態がこうで、現状はこうです。この乖離を『問題』と定義しました」という人がいる。それに対して、「私も問題だと思います」という人もいれば、「いや私はそう思いません」という人もいると。

その合意形成するプロセスそのものが社会でもあります。何かの問題意識や課題設定から、社会そのものを再定義していくことは、僕たちがずっとやってきたことでもある。

だからさまざまな問題に対して、なんでもかんでも「社会問題」とされることに松尾さんが疑問を覚えるのは、僕もそのとおりだと思います。

誰かの考える「問題」を「社会の問題」とする合意形成のプロセスとは?本対談の後編はこちら

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