ADHDに「適した職業」「適さない職業」の決定的差 マルチタスクな机仕事はオススメできない
さらに、ADHDにおいては不注意の表れとして、交通事故を起こしやすいというデータもあります。アメリカの心理学者・バークレーらは、105例の成人ADHD患者を対象に調査をしたところ、健常群と比較して、ADHD患者の交通違反や事故の頻度が高率でした。
私自身も、診療をしていて驚かされることがあります。私は世田谷区と品川区の2つの大学病院で診療をしているのですが、自分で品川区のほうに電話して予約したにもかかわらず、世田谷区に来てしまう人がときどきいるのです。これまで数カ月に1回、このような患者から「今、烏山病院にいるのですが、どうしたらいいですか」と受付に電話がかかってきました。
職場でも、このような特性のある人だということを周囲が理解し、サポートできればいいのですが、いちいちミスをとがめ、それを本人の能力不足ややる気のなさの表れだと誤解される職場では、人間関係が悪化してしまうので注意が必要です。
ADHDの人が得意とする仕事
ADHDの注意機能については、特定の事柄に注意を向け続けることができない「持続性」の障害に加えて、周囲のさまざまな事柄に注意を配分できない「分配性」の障害、そして必要に応じて注意の対象を切り替えることができない「転換性」の障害もあります。
要するに、「周囲全体にそれとなく注意を向けること」や「いくつかの事柄にうまく注意を分散すること」が苦手なのです。対象が複数あると、注意の切り替えがなかなかうまくいきません。
一方で、「注意欠如多動性障害」という病名とは矛盾していますが、ADHDの人は、注意力が全く欠如しているわけではありません。逆に、特定の事柄には、過剰に集中することもみられます。
とはいえ、通常ADHDの人たちは不注意で、ケアレスミスが多いのは事実です。また課題をこなしているときに予想外のアクシデントが起こると、注意を向ける方向がわからずにパニックを起こすことも珍しくありません。こうした特性を持っているため、一般に、ADHDの人は総合職的な事務職は苦手としているようです。