ADHDに「適した職業」「適さない職業」の決定的差 マルチタスクな机仕事はオススメできない

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以前、烏山病院に通院している発達障害の患者を対象に、仕事の内容を調べたことがありました。すると、ADHDの人は専門職が多く、ASD(自閉症スペクトラム障害)の人は定型的な事務職が多いという結果が出ました。

ADHDは静かなデスクワークが苦手で、マルチタスクも混乱の種になります。自分の裁量でできる仕事、例えばイラストレーター、作家、コピーライター、プログラマーなどの分野が多かったのです。

一方ASDは、決まった作業を続けることは比較的得意で、デスクワークも苦にはなりませんが、周囲に突然話しかけられたり、新しく指示をされたりすると、やはり混乱しやすいという特性を持っています。

私たちの調査の結果、ADHD145例のうち、専門的・技術的職業が48%、事務従事者34%、サービス業6%、運輸・包装・清掃6%という内訳でした。またASD348例のうち、事務従事者が54%、専門的・技術的職業26%、運輸・包装・清掃8%、サービス業5%でした。

ADHDの人は、話し方も、普通の人より早口で、落ち着きなく過剰さを感じさせることが多いと思います。

会話で「ズレた回答をする」理由

さらにいうと、話の要点がズレることも、よくあります。ADHD当事者は、相手のほんの一言に反応して、思いついたことを一方的に話し続けてしまいがちだからです。

休職していたADHDの患者が「就職説明会に行ってきた」と言うので、「何社ぐらいの説明を受けましたか?」と尋ねました。彼は、こちらの質問には答えず「自分はこういう仕事をしたいから就職説明会に行ったんだ」という話を延々と続けました。

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彼は、自分の考えを伝えたいという衝動を抑えられなかったのです。話の合間で、もう一度、同じ質問をすると、彼はやっと「1社だけです」と教えてくれました。

このようにADHDの人には、話の要点を捉えずに、自分の関心に従って、たった一言に強く反応してしまうという傾向がみられます。そのために、相手が何を聞こうとしているか理解しようとしないで、話がズレてしまいがちになるのです。本人は、その点に自覚がないことも多く、話もどんどん長くなるのです。

けれどもこうした会話は、職場など社会生活においては大きなマイナスです。相手の話をきちんと聞き、それに対して話を進める工夫は重要です。

岩波 明 精神科医
いわなみ あきら / Akira Iwanami

1959 年、神奈川県生まれ。東京大学医学部卒業後、都立松沢病院などで臨床経験を積む。東京大学医学部精神医学教室助教授、埼玉医科大学准教授などを経て、2012 年より昭和大学医学部精神医学講座主任教授。2015 年より昭和大学附属烏山病院長を兼任、2024 年より昭和大学特任教授。ADHD 専門外来を担当。精神疾患の認知機能障害、発達障害の臨床研究などを主な研究分野としている。著書にベストセラーとなった『発達障害』(文春新書)のほか、『狂気という隣人 精神科医の現場報告』(新潮文庫)、『大人のADHD もっとも身近な発達障害』(ちくま新書)など。

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