「議論をすり替える輩」にダマされる人の盲点 ツイッター上でも散見する「詭弁」の見破り方
このタイプの詭弁も、かなりよく使われます。例えば雑誌などで、成功した起業家がたまたま着ていたファッションを「成功者のファッション」だと言って特集したりしているのは、結構目にするのではないでしょうか。
しかし、本当に成功者になりたければ、ファッションなんかより、彼らの努力や実際の経営手法などの本質的な強い原因に注目すべきなのです。
最後に「第3の要素」を無視する詭弁。「第3の要素(第3の因子とも)」とは、クリティカルシンキングや論理思考などと銘打った教科書などでは必ず扱われるテーマで、ある意味では必須教養です。
とは言っても、文字面だけでは、なんのこっちゃわからないでしょうから、例で見ましょう。これは実際に著者が聞いたことのある「第3の要素」を無視した詭弁です。
「不思議なことに、売り上げが減るほど、クレームは増えるんだよ」
不思議でもなんでもないのです。これは「商品の質が悪くなる」という、「第3の要素」を見失っているから不思議に思えるだけ。本当の原因と結果の関係はこうです。
「商品の質が悪くなる」(原因)
→「売り上げが減る」(結果1)
→「クレームが増える」(結果2)
この「商品の質が悪くなる」という原因を無視して、結果1と結果2を原因と結果のように語っているから不思議な結論が成り立っているのです。ついでに、もう1つ例を挙げておきましょう。
「アイスの売り上げが伸びると、熱中症が増える。アイスの食べすぎが熱中症の原因だ」
隠された「第3の要素」はなんでしょうか?
答えは、「夏は暑い」です。
アイスの売り上げが伸びるのは夏ですし、熱中症が増えるのも夏です。そして、「夏は暑い」からアイスの売り上げが伸び(結果1)、「夏は暑い」から熱中症が増えるのです(結果2)。そんな別口の結果1と2を因果関係でつなげているのが、この詭弁です。
上記の2つの例文は、「売り上げ」と「クレーム」、「アイス」と「熱中症」といった身近な言葉なので、まだなんとなく気がつけますが、これが聞きなじみのない単語で、
「マルキストロールの摂取量の多いA地域では、有意に寿命が短いことがわかった」
などと言われるとなかなか手ごわいもの。
こうした主張を目にしたときも、「マルキストロールの摂取量が多くなることが、寿命が短くなることの直接の原因だろうか?」「マルキストロールの摂取量が多くなることと、寿命が短くなることの共通の原因(第3の要素)があるのではないだろうか?」などと考えることが大事です(ちなみにマルキストロールという物質は架空です)。
自信満々の言い分こそ疑え
以上、今回は原因と結果についての詭弁について見てきました。最後に付け加えれば、詭弁にだまされないために最も大事なのは、「疑う」という姿勢そのものです。
ソフィストというのは、今も昔も、言い分がチェックされないために心血を注ぎます。詭弁のほとんどはチェックされればすぐにバレるからです。彼らが必死に自信満々に語るのも、そのため。「チェックの必要はないですよ。本当なんだから」と言いたいわけです。
だからこそ、こちらとしては疑う。疑うことそのものが、詭弁のまかり通る実社会を生きるためのある種の護身術なのです。
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