「議論をすり替える輩」にダマされる人の盲点 ツイッター上でも散見する「詭弁」の見破り方
しかし、この記事を時間を割いて読んでくださる皆さんは、そんな大衆ではないはずです。
ならば、複雑な出来事の原因を、ただ1つの何かに帰するような主張を目にしたら、それに飛びつく前に「原因がそれだけって本当か?」と反射的に疑うクセをつけましょう。
2つ目は、原因でないものを原因とする詭弁です。これは、アリストテレスも『弁論術』で取り上げている古い詭弁です。例えば次のような、
「今日悪いことが起きたのは、朝、玄関を出るときに右足から歩き始めたからだ」
世の中には、このように「偶然」という言葉で処理すべき事柄を、必然のように語る詭弁が確かに存在します。
「政治の世界に顕著」な詭弁
言うまでもありませんが、「Aの後にBが起こった」からと言って「AのせいでBが起こった」とは限らないのです。もちろん、大の大人がまじめな議論をするときにこういう話し方をするのはナシですし、これにだまされるのはもっとナシ。
ちなみに、アリストテレスはこの詭弁について「政治の世界に顕著」(『弁論術』第2巻第24章)だと言っています。
彼によれば、ギリシャでデモステネスという人物がある政策を行った後に、たまたま戦争が起きた際、当時の敵対する政治家はその政策と戦争に関連がなかろうが、すかさずこう言ったそうです。
「戦争が起きたのは、デモステネスの行った政策が原因だ!」
この手の詭弁は、現代の政治の世界でも頻繁に耳にするものです。
繰り返しになりますが、「Aの後にBが起こった」からと言って「AのせいでBが起こった」とは限りません。大事なのは、AがどんなメカニズムでBの原因になったといえるのか? なのです。
ここがハッキリしない限り、その意見を信用してはいけません。
本当の原因とたまたま一緒にあった、おまけの要素のほうを原因だと言い張る詭弁もあります。
「3食トマトだけを食べ続けた結果、1週間で5キロやせた。これはトマトに含まれる栄養成分が原因だ」
3食トマトだけを食べてやせたのは、トマトのカロリーが低いというのが主たる原因でしょう。カロリーさえ低ければ、キュウリでもセロリでもよかったはずです。つまり、トマトの「栄養成分」は、本当の原因とたまたま一緒にあった、おまけの要素なのです。