数学的に考える「じゃんけん」で有利な手は何か 人間の癖を見抜き確率・統計からわかること

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では725人から集めたのべ11567回のじゃんけんデータからみたじゃんけんの確率はどうだったのか? 集計結果は以下である。グーが4054回、チョキが3664回、パーが3849回。したがって、「グーを出す人が多いことから一般にじゃんけんではパーが有利」だと導かれた。このデータに関して心理学的には、「人間は警戒心をもつと拳を握る傾向がある」という説明のほか、「チョキはグーやパーと比べて出しがたい手である」という説明もある。

統計学的に述べると「グー(チョキ)について特徴はなく、その確率は3分の1」という仮説を立てるとそれは棄却され(有意水準5%の正規検定とする)「人間はグーが多い」、「人間はチョキが少ない」と言える。また、そのデータから別の特徴も見られる。

2回続けたじゃんけんでは違う手を出したがる?

2回続けたじゃんけんは延べ1万833回であったが、そのうち同じ手を続けて出した回数は2465回であった。例えば、自分はじゃんけん8回戦を行って、順にグー、グー、パー、チョキ、グー、パー、パー、チョキと出したならば、そのうち、1回と2回、6回と7回が同じ手を続けて出したことになる。したがって、この場合は2回続けたじゃんけんが延べ7回で、そのうち同じ手を続けて出した回数は2回となる。

1万833回のうちで2465回という数が意味することは、「人間は同じ手を続けて出す割合は3分の1よりも低く4分の1近くしかない」ということである。このことから、「2人でじゃんけんをしてあいこになったら、次に自分はその手に負ける手を出すと有利」という結論が得られる。

統計学的に述べると「2回続けるじゃんけんに特徴はなく、同じ手が続く確率は3分の1」という仮説を立てるとそれは棄却され(有意水準1%の正規検定とする)「人間は2回続けるじゃんけんで異なる手を出したがる」と言える。

これまでにいくつかの拙著で、上記の部分を書いたこともあって、テレビへの出演や高校生の課外活動でのアドバイスなど、じゃんけんについて数多くの依頼が届いた。あまりにもその数が多く、また海外のテレビ局からも「じゃんけん博士さんですか」という電話も入るようになって困惑した。

次に、数学的に考える事例として「ナンバーズ4宝くじ」を取り上げたい。ナンバーズ4宝くじは1枚200円で購入し、4桁の数字からなる当せん番号を当てた者全員で賞金を等しく分けるくじである。したがって、当てた者の人数が多ければ賞金額は少なくなり、当てた者の人数が少なければ賞金額は多くなる。ちなみに、全購入代金の45%を賞金に当てることになっている。

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