ホームレスになる前に、「妻や子供を捨てた」ことをとても悔やんでいる人はとても、たくさんいた。多くの人は、
「妻や子供には恨まれていると思う」
と、とても深刻な面持ちで語っていた。
ただ逆にホームレス生活になった後も、いまだに交流があると語る人も意外といて驚いた。
2013年頃、代々木公園のコンクリート製の東屋で生活していた男性(50代)に出会った。
髪もヒゲもぼうぼうに伸ばしっぱなしで、ちょっと怖い雰囲気があったのだが、話してみるとすごく楽しく会話ができる人だった。
「もともとは製薬会社のMR(医薬情報担当者)だったんだよ。MRって言えばかっこいいけど、“病院の奴隷”だからね。病院に薬買ってもらわなきゃ、製薬会社は潰れちゃうからね」
ホームレスのきっかけは逮捕
彼が働いていた時代はちょうど、バブル景気の頃だった。
「毎日のように、医者を飲みに連れて行っていたよ。酒飲ませて、女抱かせて、金握らせて……。とにかく景気がよかったからね。当時は麻雀をよくやったけど、段ボールに適当に万札放り込んでたもんな。たぶん3000万円くらいあったんじゃないかな?」
と彼は遠い目で語った。彼は現在、アルミの空き缶を集めて換金して生活していたが、一日の平均収入は3000円だという。
彼がホームレスになったきっかけは、ずばり逮捕されたからだ。
「医師法違反と薬事法違反でガッツリ逮捕された。執行猶予4年で、会社はクビ。それで家を離れてホームレスになった」
彼が逮捕された時には、結婚していて子供もいた。妻と子供を捨ててホームレスになったわけだが、それでも家族と縁は切れていないという。
「子供はたまに遊びに来るよ、差し入れ持って。子供って言っても、もう30歳を超えているけどね。嫁は来ないよ。いつも弁当とか差し入れ持ってくるんだけど『食い物じゃなくて、現金持ってこい!!』って追い返してるよ(笑)」
と楽しげに語った。もうそれならば、家に帰ったらいいと思うのだが、そういうわけにはいかないという。
「俺が家に帰ると借金取りが家に来ちゃうかもしれないから、ダメなのよ。まあそのうちほとぼりが冷めたら帰るかもしれないけど」
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