ホームレスがなかなか口に出せない家族事情 ふとしたことで意外と簡単に壊れて戻らない

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2005年頃、上野公園で炊き出しに並ぶ50代の男性に話を聞いた。

「父親はプライドが高い人で、何を言っても聞いてくれない人だった。進路も自分の自由には選べなかった。何をやっても怒られてばかりだった。20代で家を飛び出してそれ以来帰っていない。今、自分がホームレスになっているのは、父親のせいだと思う」

彼は、とてもつらそうに語った。

彼の語る話はもう30年以上前の出来事で、父親ともずっと会っていないのだが、それでも父親を許せないのだという。

毎日のように父親に対する怒りで震えるという。彼との会話には節々で、

「殺したい」

「死にたい」

などの発言があった。ずっと思いつめた表情をしていたので、もし余裕ができたならば、精神科などで治療したほうがいい状態かもしれないと思った。

“パラサイト・シングル”からホームレスへ

ずっと働かずに親の庇護の下に暮らしていたが、親が亡くなってしまって、家賃を滞納して払えずにホームレスになったという人もいた。多摩川で暮らしていた男性(50代)は42歳まで家で過ごしてきたという。

働くのが嫌いで42歳まで家にいたという多摩川の男性。その生い立ちのせいかガツガツしたところがあまりなく、表情もやわらかい(筆者撮影)

「働くの嫌でずっと家で暮らしてた。たまに知り合いの魚屋で働いたけど、稼いだ金は自分のために使ってたね。まあクズだって自分でもわかってるよ」

彼はホームレスになった後も働いていないそうだ。たまにお金をくれる人や、食べ物をくれる人がいて、それで食いつないでいるという。お金も食べ物もない時はひたすら我慢するという。

「俺は生きることに図々しくないから、そういう時は我慢するよ。もうとっとと死にたいよ。早くお迎えこないかあ」

と笑いながらうそぶいた。

学校を卒業した後も親と同居し、親に依存して生活する、いわゆる“パラサイト・シングル”。古くて新しい問題だが、昨今は「引きこもり」というキーワードで論じられてもいる。

親が先に亡くなってしまった場合、生活を保つことができずホームレスになる人も現れている。これからも増加していくことは目に見えているので、国や自治体は対策していかなければならないだろう。

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