「タレントへの圧力」許す日本芸能界の構造問題 ジャニーズ、吉本騒動を防ぐためできること

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ただ、大手エージェンシーは、俳優だけでなく監督、脚本家なども抱えているため、これらのクライアントをセットにしてプロジェクトを売り込み、そのパッケージ料金をスタジオなりテレビなりから受け取るということを昔からしている。最近、それについて脚本家たちが「クライアント一人ひとりの利益を最大優先し、そのために動くというエージェンシーの役割に反する」と、もめ事を起こしている。

話がそれてしまうのでこれについてはここでやめておくが、つまり、そういうことが問題視されるほど、エージェンシーというのは「スタジオ側、テレビ側」のチームではなく、「タレント側」のチームだという位置づけなのである。

こんなふうに基本から違うものを比較しても意味がないと思うかもしれない。それは筆者が以前、同様の記事を書いた時にも聞いたし、実際、一夜にして日本のシステムを変えるのは、不可能である。

しかし、だからといって今のような状況を続けていいのだろうか。公正取引委員会がジャニーズに注意を与えたというのはいいニュースで、そこにはわずかな希望を感じるが、芸能人たちにも、ただ黙って物事が好転するのを待つ以外に、今、できることがあるのではないかと思うのだ。例えば、組合を結成することである。

タレントたちを守る「SAG」

ハリウッドには、監督、脚本家、プロデューサーなど、それぞれの職業のための組合が存在する。中でも大規模なのが、映画俳優、テレビ俳優、声優、アナウンサー、パーソナリティーなどが所属するSAG-AFTRA(以下SAG)だ。

SAGは、映画スタジオとテレビ局を代表するAMPTPと、労働環境、支払い条件などについて細かい契約を結び、すべての製作はこれに従って行われている。変化する世の中の事情を反映するため、更新は定期的に行われ、話し合いが行き詰まれば、ストも起こりうる。AMPTPには属さないNetflixも、最近、別個にSAGと同様の契約を結んだ。

SAGはまた、タレントが所属するエージェンシーとも、それぞれに契約を結ぶ。SAGメンバーは何をおいてもまずSAGに所属するものであり、そのエージェンシーにもその人の代表を務めてもいいとSAGが許可を与える意味での契約だ。

「SAGメンバーは、そのエージェンシーに所属するに当たって、自分にはどんな権利が与えられているのかを知っている。移籍はいつでも自由だし、エージェンシーとの関係をコントロールするのは自分だ」と、12年間SAGに所属してきた俳優のシャーン・シャーマ(『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』『スキャンダル 託された秘密』などに出演)は言う。

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