「引っ越し大名!」は究極のサラリーマン映画だ 星野源の主演映画は「国替え」の実話がベース

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姫路藩の書庫番でありながら、ひょんなことから引っ越し奉行に任命される主人公・片桐春之介を演じるのはミュージシャン・俳優・文筆家とマルチに活躍する星野源。

左から順に星野源、高橋一生、高畑充希。「神キャスティング」といわれる出演陣も魅力の1つ ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会

書庫にこもりっきりで本を読んでばかりいて、人と話すのが苦手な引きこもり侍という役柄は、「(2016年の大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の)津崎の時代劇版のようでピッタリ」と土橋も太鼓判を押している。

本作が6年ぶりの主演映画となる星野自身も「脚本がとても面白くて。すぐに出演したいとお話しました」とのことで、「彼は家でなく職場の書庫に引きこもっている侍でしたが、鷹村に引きずり出されて引っ越し奉行になります。そこで大好きだった本の知識を生かして成長していくというストーリーは、時代劇では見たことがなかったのですごく面白い。しかも最後は感動できる、なかなかない時代劇」と自負する。

また、前引っ越し奉行・板倉重蔵の娘で、春之介に国替えの手順を指南することになる、於蘭を演じたのは高畑充希だ。

映画版の於蘭は、春之介をぐいぐい引っ張るたくましい女性として描かれていたが、犬童監督は「高畑さんの見た目はもちろん若いんですが、彼女の中にある“正しさ”みたいなものが1つの芯となって、大人に感じるのかもしれません。高畑さんの姉御肌的な魅力がうまくはまったと思います」と自信をみせる。

リーダー論にも通ずるストーリー

そして、姫路藩御刀番で、幼馴染みの春之介を引っ越し奉行に推薦する鷹村源右衛門を演じたのは高橋一生。矢島プロデューサーも「もともと声のトーンが低い人ですが、あの声で豪快な役をやってもらったら、今までのイメージを壊すような新しいキャラクターが生まれるのではないかと思い、オファーをさせてもらった」という。

また、劇中には鷹村が活躍する迫力満点のチャンバラシーンも用意されており、痛快娯楽活劇としても見応えのある内容となっている。

春之介が引っ越しの際に行ったことは、まず藩の財政をしっかりと把握し、必要な予算を算出。そして人・もの含めてできる限りスリム化をはかり、同時に資金を調達するということ。

自分の采配が大勢の藩士の命運を左右する。春之介はこの無謀なプロジェクトを成功させることができるのか――。リーダー論としても興味深く、まさに現代社会に通じる物語がここにある。

(文中一部敬称略)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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