こうしたツールなしでの運用は、例えるなら、飛行計器類なしで飛行機を操縦するくらい不自由で不安だと言っていいのではないか。
個別株投資が楽しいと思う筆者ではあるが、ポートフォリオの分析ツールなしでの個別株投資を、本格的な資産運用・資産形成の手段として個人投資家に勧めようとは思わない。
ツールなしの場合、「大きく負けてもいい範囲のお金で遊ぶ」以上のレベルで個別株投資を行うのは止めたほうがいい。相も変わらず「資産形成にはインデックスファンドがいいでしょう」と言い続けるしかなさそうだ。
問題は、現在、個人投資家が安価に利用できるポートフォリオ分析ツールがないことだ。機関投資家が使っている「マルチファクターモデル」と称する株式ポートフォリオの分析ツールと同目的のツールが必要なのだが、安価な物がない。世界標準のツールとして有名なのはバーラ・モデルだが、年間1千万円を超える利用料は個人には高いし、そこまで複雑な構造のツールは要らない。
個人投資家向けの安価な銘柄分析・管理ツールの提供を
時価総額の大きさ、利益や純資産に対する割安度、市場全体の変動への連動性、配当利回り、業績の変動性、為替レートへの感応度、海外市場との連動性といった一般的な共通要因に銘柄が属する業種を含めた、リターン変動の傾向性を説明するファクターを使って、銘柄およびポートフォリオのリスクを分析・推計することができたらいい。
こうしたツールの作り方は1970年代に基本型が完成しており、技術的に難しいものではない。しかし、問題はデータの調達(年間数千万円)とモデルの更新やメンテナンス(こちらも数千万円レベルか)にお金がかかることだ。とくに、日本の場合は、データ代が高いことが制約になっており(東洋経済新報社は有力なデータ調達先候補の1社だ)、このことは金融研究の遅れにもつながっている。
そこで、東洋経済新報社に期待したいのは、個人投資家がポートフォリオの分析と管理を行うことができるツールをできるだけ安価に提供することだ。また、将来も「『四季報』を売るための個人投資家サポート」というビジネス上の利益につながるし、日本の個人投資家のレベルアップに資するという大義もある。ぜひ、ご検討いただきたいものだ(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)。
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