「会社四季報」が将来もさらに読まれるために 「四季報なしの株式投資」は、考えられない

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もちろん、個人投資家は分散投資を行うことができるし、そうするほうがいいのだが、TOPIXに近いレベルまでリスクを縮めようとすると、地味な銘柄をたぶん十数銘柄集めなければならないし、この場合、(1)銘柄に偏りが生じるし、(2)期待リターン面で魅力的な銘柄を多く選べない可能性が大きいし、何よりも(3)それぞれの銘柄をどのようなウェイトで持つのがいいのかを求めることが難しい。

つまり、分散投資したとしても個人投資家が持つポートフォリオとインデックスファンドの「ポートフォリオとしての評価の差」は、大差でインデックスファンドの勝ちだろう。そう思うので、筆者は多くの場合、投資家に対してインデックス投資を勧めるのだ。

しかし、投資家が十数銘柄から20~30銘柄位を使って、自分のポートフォリオのリスクを分析・推計できるなら、インデックスファンドにそう劣らないバランスのポートフォリオを作る事ができそうだし(とくに日経平均は偏りが大きいので勝ちやすいかもしれない)、何よりも自分が保有するリスクを把握しながら、個別株投資を楽しむことができる。

筆者は、かつて国内株式のアクティブファンドのファンドマネジャーだったことがあるのだが、アクティブファンドの運用は大変楽しい仕事だった。投資に興味のある読者には、ご自身の資金の個別株運用に将来ぜひ取り組んでもらいたいと思っている。株式投資は、趣味とするに足る知的で深いゲームだ。

個別株投資普及の鍵はポートフォリオ分析ツールにあり

尚、アクティブ運用は自分でやるから面白いのであって、他人が運用するアクティブファンドに投資することに、筆者は魅力を感じない。投資家の皆様にも、少なくとも現在よりも大幅に手数料水準が下がるのでなければお勧めしない。個人向けの運用商品としてのアクティブファンドは、現在、インデックスファンドに大幅に劣っている(注:①平均成績で負けているし、②相対的に良いアクティブファンドを事前に選ぶことは不可能だから)。

さて、十数銘柄レベルくらいの分散投資でも、インデックスファンドに対してそう大きく効率が劣らないポートフォリオを作ることは可能なはずだ。

ただし、この際に、投資家としては自分のポートフォリオの、①全体のリスクを知りたい、②リスクをもたらしている要因の内訳を知りたい、③リスク上の偏りを知りたい、④銘柄のウェイトを変更した場合に①、②、③がどう変化するかを知りたい、といった点に切実なニーズがあり、こうしたニーズを満たすことができるポートフォリオの分析・管理ツールがないと、安心して個別株投資のポートフォリオを運用することができない。

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