JR新駅がカギを握る「湘南モノレール」の未来 昨年にはPASMO導入、利用者獲得に何が必要か

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しかし、JR村岡新駅の行方は、湘南モノレールの乗客増に向けた取り組みに大きな影響を及ぼすことは間違いない。今後、湘南モノレールにとって、さらなる工夫が重要となる。

昨今、電車やバスなどの予約や決済をスマートフォンなどの1つのプラットフォームで完結させる「MaaS」導入に向けた取り組みが各地で進んでいるが、湘南モノレールにおいても、他鉄道やバス、タクシー、カーシェアなど他の交通機関との連携を進めて、藤沢・鎌倉エリアにおけるプレゼンス向上を図りたいところだ。

利用促進に何が必要か

他の交通機関との連携が重要と筆者が考える理由は主に2つある。1つ目は、湘南モノレールの利用促進につながると考えるからだ。バス、タクシー、マイカーの利用者を湘南モノレールに誘導する仕掛けとして、湘南モノレールの駅と沿線地域との間の二次交通としてのバス、タクシー、マイカー(を停める駅前駐車場)とをMaaSなど1つのプラットフォームで連携させることが、湘南モノレールの利用促進の後押しとなる。

2つ目は、JR村岡新駅に対する競争力向上のために必要と考えるからだ。現状、湘南深沢駅の周辺住民が横浜や都内などへ鉄道で移動する場合、湘南モノレールでJR線との接続駅である大船駅へ向かうルート、または湘南江の島駅へ出て江ノ電または小田急線へ向かうルートを選択することになるが、いずれも乗り換えが必要だ。

湘南深沢駅前に広がる開発予定地。画面奥を走るJR東海道本線に新駅を設ける構想がある(編集部撮影)

新駅が開業すれば、横浜・都内などをJR東海道本線が乗り換えなしで結ぶようになるほか、運賃面でもJRが優位に立つ可能性が高い。湘南モノレールにとって、他の交通機関との連携を強化することで、沿線住民や地域外からの来訪者の誘致につなげる必要がある。たとえば、MaaSの利用でモノレールと路線バスとの乗り継ぎ割引を適用するなど、より一層の工夫があってよい。

PASMO導入は、湘南モノレールをより前向きなマインドに進化させた。より一層の利便性向上とサービスの充実を通じて、他の交通機関に対する競争優位を是非とも確立したい。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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