アスクル社長「ヤフーの乗っ取りは許せない」 解任を突き付けられた岩田彰一郎氏が猛反論

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ーー経済産業省が策定した「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(グループガイドライン)には「一部事業部門の譲渡・関連事業間の調整」が利益相反リスクに当たるという記述があります。

今回の件はまさにそれに該当する。ロハコを譲渡することは、ヤフーの株主にとってはよいことかもしれないが、アスクルの株主にとっては大きな不利益になる。それなのにアスクルの一般株主の利益にまったく配慮しないヤフーは横暴だ。

これが未上場の100%子会社に対する譲渡要求であれば問題はない。配慮すべき少数株主が存在しないからだ。ただ、資本・業務提携の際に交わした契約の中には、ヤフーによるアスクル株の買い増しはできないという条項がある。このためにTOBなどでアスクルを完全子会社化することはできない。そんな中で、今回のことが起こった。

ヤフーは直販のECを欲しがっている

ーーロハコ事業を買い取り、ソフトバンクとヤフーは具体的にどうしたいのでしょうか。

それについては、まったく説明を受けていない。2012年に結んだ資本・業務提携の契約で盛り込んだイコールパートナーの条項に抵触するので、言えないのだろう。もう1つはガバナンスの問題。アスクルの一般株主の利益に反する提案だから説明しないのだろう。

これまでのECは楽天のようなモール事業が中心で、各店がモールを通じて販売するモデルだったが、日用品需要の高まりに伴い、直販のダイレクトモデルが主流になりつつある。その中でアスクルはロハコというサービスと、それを支える強固な物流網やメーカーとの良好な関係を持っている。ヤフーにはそれがないから、ロハコを手に入れられればアマゾンと対抗できると考えているのではないか。

ーー一方で、ロハコは2012年のサービス開始以来一度も黒字化せず、2019年5月期は92億円の赤字を計上。2020年3月期も赤字が続くなど、苦しい状況が続いてます。

赤字が続いているのは、2017年2月にアスクルロジパーク首都圏で発生した火災によるところが大きい。これによって、2017年5月期には100億円以上の特別損失を計上した。そこに宅配クライシスとも呼べる物流費の上昇が追い打ちをかけた。

ただ、そうした逆境でも売り上げは着実に成長させてきた。今は「独自価値EC」への転換を進めている最中だ。お客様が求めるものを提供できなければ激化する競争の中で生き残ることはできない。そのためにもメーカーと価値の高い差別化された独自価値商品を強化している。

そもそもロハコはヤフーとアスクルの共同事業だ。それなのにヤフーはただ一方的に、アスクルに対して業績悪化の責任を押しつけている。そうした態度はパートナーとして正直いかがなものかと思う。

ーー8月2日の株主総会まで、残されている時間はほとんどありません。

今回の件がまかり通ってしまえば、日本のコーポレートガバナンスは機能しなくなってしまう。政府が掲げる政策と逆行するし、この点は専門家の意見を仰ぎたい。外部の投資家との交渉も、引き続き行っていく。ヤフーに対しても、資本・業務提携関係の解消に向けた協議の場を設けるよう求めていく。

佃 陸生 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

この著者の記事一覧はこちら
二階堂 遼馬 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事