職場で退職を促されてすぐ、人材紹介会社に登録をして動き出したが、
「『正職員は責任ある仕事なので、不妊治療をしているというのは印象が悪い。区切りがついたタイミングじゃないと難しい』と言われました。区切りとは、子どもを産んでフルタイムで復帰するか、不妊治療を諦めるかのどちらか。不妊治療をしている限り、派遣と単発を組み合わせるしか選択肢はありませんでした」。
今は、育休中の看護師の代替として1カ月単位の短期派遣で働いている。そのため前任者の子どもが保育園に入れれば、契約は打ち切られる。
「本当は看護師としてやりたい仕事はあるけれど、今は仕事を選んでいられません。何科でもいいし、内容も問わない。治療費とローンが払えればそれでいいです」
ただ、戸山さんが今回よかったことが1つあるという。それは「あまり治療に積極的とは思っていなかった夫が『40歳まで頑張ろう』と提案してくれたこと。今までプレッシャーを与えないために、あまり口に出さなかったみたいです。あと5年モチベーションが保てるか不安でもありますが、夫とこれからのことをいろいろ話すことができたのはよかったです」。
治療を開始したのは27歳だった
現在、33歳の山口佐也子さん(仮名)は、若いながらも不妊治療歴は6年。同棲を経て結婚して半年後、腹痛を感じ産婦人科に行ったときに「1年以上、普通に性生活があるのに妊娠しないのはおかしい」と言われたことがきっかけで、不妊治療を始めることになった。
治療を開始したのは27歳。若いからすぐに妊娠するだろうと本人も先生も思っていたが、タイミング法を半年、人工授精を3回繰り返すも妊娠には至らず。不妊治療専門の病院に移って、体外受精にステップアップすることになった。
結婚当初は、地元・名古屋で正社員として働いていたため、朝イチに病院に行って、それから出社する生活。しかし、体外受精にステップアップしたことで急な休みや午前休が増え、正社員からパートに契約を変更した。
以前からネイリストに憧れていて、仕事をしながら勉強をしていたという山口さん。不妊治療をしながらでも、自分のやりたいことにまだまだチャレンジしたいし、できる年齢だ。同じパートならば、と思い切ってネイリストに転職。ネイリストとしてのキャリアをスタートさせた。
ネイルサロンの面接官が男性で言い出しにくかったこと、職場は女性ばかりだが全員独身だったこともあり、不妊治療をしていることを職場で言う機会もないままだったが、「私は生理の周期が安定していてスケジュールが読みやすかったし、ホルモン剤の副作用もそれほど出ないタイプ。雇用形態もパートだったので、余裕を持ってシフトを組めばとくに問題はありませんでした」。
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