スマホで敗れた「ノキア」が再び復活できた理由 大変革を率いた現役会長が語る激動の日々
――会長就任後、そうした問題をどのようにして解決したのですか。
まず自分自身にさまざまな問いかけをする。取締役会であれば、「われわれは株価やメディアの言うことばかりを気にしていないか?きちんと競合状況やテクノロジーの根本変化について話しているか?」といった具合だ。
次に、こう考える。「われわれは物事について正しいやり方で議論しているか」。穏便に済ませようとするのではなく、互いを信頼し、ネガティブなトレンドやニュースに向き合おうとしているか。誰かが悪いニュースを報告したら、微笑んで、感謝をする。そうしなければ、誰も悪いニュースを報告してこなくなる。
そして最後に、「われわれの組織の中には誰でも異議を唱えられる環境があるか」と問う。CEOにどうやって異議を唱えるか。これは日本の企業文化でも難しいことだろう。
こうした議論の環境を作るのに重要なのが、私が「パラノイア楽観主義」と呼ぶものだ。パラノイアのような健全なレベルの用心深さと恐怖心に加え、経営に関する複数のシナリオを考え、前向きで先見性のある展望を併せ持つという考え方だ。
マイクロソフトへの事業売却の舞台裏
――これまでの経験では実際にはどのように役立ってきたのでしょう?
マイクロソフトと携帯電話事業の売却交渉をしていたときのことだ。われわれのビジネスそのものといっていい事業を売却することは容易ではなかった。当時はスマホの製品開発でマイクロソフトと提携し、「ウィンドウズフォン」を展開していた。彼らとは独占契約を結んでいた。
だがマイクロソフトが自社開発のノートPC「サーフェス」を発表すると、事態は大きく変わった。われわれノキア側は「マイクロソフトはそのうちスマホにも進出するのではないか」と考えた。独占契約と言っても一方通行だったのだ。ノキアは他社とは組めないが、マイクロソフトは競合製品を作ってもよかった。
そこでさまざまなシナリオを考えた。スマホを作るとしたらどれくらいの時間がかかるか、それに対してわれわれは何をすべきか、彼らがやろうとしていることをどのように知るか。あるいは、彼らを訴えることはできるか。さらに、マイクロソフトがスマホメーカーを買収しているとしたら?もしかするとHTCを買収するのかもしれない、彼らは交渉中なのか。最悪のケースを避けるために、さまざまなシナリオを考えた。
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