スマホで敗れた「ノキア」が再び復活できた理由 大変革を率いた現役会長が語る激動の日々

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――通信会社との関係に縛られていたのですね。

そもそも消費者の顧客は通信会社のもので、われわれのものではないと考えていた。アップルが「アップルID」でユーザーを囲い込んだように、われわれも「クラブ・ノキア」という仕組みを作ろうとしたが、通信会社からは反対された。

シラスマ会長は自ら起業した会社のCEOを務めた後、ノキア取締役に就任。起業家精神と客観的な視点でノキアを率いてきた(撮影:佐々木 仁)

一方、アップルは「iPhone」というまったく新しい製品から始めたため、通信会社のことを気にする必要はなかった。アップルIDの仕組みを作り、アプリストアを作った。ちなみにアプリストアの仕組みを最初に発明したのはノキアだ。いまだにアップルからは特許使用料が支払われている。

アップルはそうした仕組みを受け入れないなら、iPhoneを売らせないという姿勢だった。ただエンドユーザーがそれを求める以上、通信会社は扱わざるを得ない。このように新参者がルールを変えてしまう現象は今、どんな業界でも起こっている。

取締役会が機能しなくなっていた

――著書の中では、当時の取締役会の機能不全を指摘しています。

iPhoneやアンドロイドスマホが席巻し、ノキアのシェアが落ち始めた頃を振り返ると、現場の社員が把握していたスマホ市場に不可欠な情報を、単純に経営層が知らなかったことが大きい。成功にとりつかれた組織では、悪いニュースは上へと流れていかない。

例えばインドでは今、SIMカードを複数搭載できる「デュアルSIM」のデバイスが人気だ。時間帯によって、通信料金が安い方のSIMカードにボタン1つで切り替えられる。だがノキアの研究開発部門や経営陣は、費用がかかって利益を押し下げるとして対応しなかった。競合がデュアルSIMの製品を投入し、ノキアのシェアは激減した。経営層の耳に消費者の声が届かない組織構造になっていた。

次ページマイクロソフトとの交渉舞台裏
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事