「SNS」と「生態系」、実は似ている本当の理由

「怒り」と「共感」がミームを「バズらせる」

ソーシャルネットワークにおけるミームの例も本書では多数紹介されるが、そのひとつが、先日日本の新聞でも「不機嫌顔の猫、死亡」として訃報が報じられたアメリカの「グランピーキャット」だ。客観的に見れば、愛想のない表情の単なる猫の画像にすぎない。が、この絵がコメントとともに流れることで、多くの人に受け入れられ、伝播し、亜種を生んだ。

私がちょうど本書の翻訳に着手したころ日本で流行っていた「大迫半端ないって」も、インターネット・ミームのひとつだ。「半端ない」のテキストと(大迫勇也選手ではなく)全国高校サッカー選手権時の対戦相手で滝川第二高校のディフェンダーだった中西隆裕選手(当時)の顔のイラストがあちこちで反復され、複製されていくようすを、「なるほど!」と思いながら見ていたことを思い出す。

「バズる」ための重要な要素は「感情」

ミームの本質は「コア・モチーフの反復」であり、文章や言葉だけでなく、絵、写真、歌、衣服の携帯、ボディーランゲージなど、さまざまなものがミームになりうる。著者によれば、ソーシャルネットワークで人々に受け入れられるアイデアを煮詰めていくと、最後にはこのミーム的なエッセンスが残るという。

ただし、生物学的進化が必ずしも進歩と同義ではないように、生き残ったミームが進歩的で良質なアイデアであるとは限らない。怒りや憎しみを伝播するミームもあれば、差別を伝播するミームもある。

ミームが「バズる」かどうかを決める重要な要素は、感情だと著者は言う。

ある研究結果によれば、ポジティブな感情を生むコンテンツのほうが拡散されやすいものの、「怒り」というネガティブな感情は、その情報を共有したいというトリガーとして最も有効であるそうだ。怒りには強いメッセージ性があるため、高速で広がるうえ、一体感をもたらしやすい。人が「怒り」に反応しやすいというのは現実のソーシャルメディアを見ればよくわかるだろう。

もっとややこしい事例も本書では紹介されている。ソーシャルネットワークでは、見ず知らずの人の言動の一面だけが取り上げられることがよくある。その言動が皮肉だったとか、ウケ狙いの冗談だった、などという点は伝わらない。もちろん発言者の人柄も言動の背景も伝わらない。そのような周辺事情とは関係なく怒りのトリガーは引かれ、ときに犠牲者を生む。

こうした点はとても難しい問題だが、著者は、ミームやソーシャルネットワークの機能そのものに善悪のフィルターがあるとは考えていない。ではどうすればいいのか? 私たちはソーシャルメディアとどう付きあっていけばよいのだろう?

生態系としてのソーシャルネットワークがもつ特性を考えれば、ミームをポジティブな感情の伝播へと導くこともできる――これが著者たちの答えだ。

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