選考していて感じた「今の就活生」4つの共通点 終身雇用崩壊、人生100年時代が前提の就職観

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また、個の力をつけることを求めながらも、「チームワークや仲間を大事にする組織で働きたい」という希望も多くの学生から受けました。個々の成長に特化して、とんでもない環境に1人で飛び込む成長手法よりも、周囲を支えながら着実に成長したいという志向、仲間とともに支え合いながら成長したいという価値観が垣間見えます。

ただ、「仲間とともに」と言いながら、面接で聞く過去のエピソードは、1人で頑張ったということや、言いたいことを主張せず相手に合わせて協調したという話が多く、お互いが意見をぶつけ合いながら、折り合いをつけ何かを成し遂げたという話は、あまりなかったのも印象的でした。逆に、そのような経験がある学生は、総じて複数の企業からの内定をもらっていました。

ビジネスになると社内外問わず、人と人との摩擦は多くなるばかりです。企業側も学生も、ただの協調ではなく、成果に向けて協働していく経験不足をどう補っていくか、意図的に取り組む課題となるかもしれません。

変化に対応できている学生も

ここまでいろいろ書いてきましたが、この2020年卒の採用を通じて、多くの学生に尊敬の念を抱くことが多かったというのが正直な気持ちです。それは、未来の不安に対して、その環境を責めるのではなく、その不安にポジティブに向き合って、自分ができることは何かと考え、努力、行動するまじめな姿勢の学生に多く出会ったからです。

また、次々に生まれる新しいことへの対応も早く、変化に強い面も見ることができました。本人が自覚しているかどうかは別として、自分ならではの強みをしっかり持つ人材は多く、ぜひその強みを生かせる場で働いてほしいと強く思いました。

来年の2021年卒の採用は、経団連ルールが撤廃し、さらに早期の選考が進むと言われています。

ただ、学生は選考が早期化するからといって、自分の就職の意思決定まで無理に早める必要はないと思っています。本当に自分が合うと思える場を求め、納得いく就職活動を経て、意思決定することが大事だと思います。

企業側も、強引に学生を囲い込むのではなく、学生にできる限り納得する就活をしてもらう中で、どうやって自社を選んでもらえるかということを追求し、採用の表面上のテクニックよりも、企業の中身をどう創り上げていくかが、学生とのアンマッチや新入社員の早期離職を防ぎ、その結果、業績の向上につなげられるのではないかと感じています。

学生と企業が安易な手法に走らず、お互いにマッチングにこだわり、要望していくことがお互いのレベルを上げ、就職におけるウィン・ウィンの仕組みを作りあげていくことにつながると考えています。

豊川 晴登 人材ビジネス企業 人事・採用担当

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とよかわ はると / Haruto Toyokawa

1974年生まれ。ベンチャー、中小、大手上場企業など複数の企業に勤務し、小売、金融、保険、アウトソース、人材等の事業領域で人事を中心としたキャリアを積む。事業責任者、上場企業の執行役員等の経験を経て、現職に至る。GCDF-Japanキャリアカウンセラー。

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