そうした経験を経ていることから、「自らが大事にしている価値観、自分が好きなこと、得意なこと」などが、より明確になっています。そして、「何か成果を手に入れたいときに、どうすればうまくいくか」、その考えを持っている人が多かったのです。
そうした学生たちは、自分を信頼しながら選考に挑んでいるように見えます。選考がうまくいかなかった場合でも、「俺はダメだ」「私はダメだ」と自分を責めるのではなく、自分の行動でよくなかったことを振り返って修正したり、自分に合わなかっただけだと割り切り、自分に合う会社に注力したりする印象があります。
早く活動する中で、すごい能力を持つ学生と知り合い、比較して自信をなくし、落ち込んで活動できなくなったという学生もいました。
しかし、そういう学生でも早く動いて時間に余裕があった分、友人をはじめとした周りの人たちとの触れ合い、情報収集、そして時間が過ぎることなどで心が落ち着き、このままではいけないと思い直す時間があったようです。そのため通常の企業の選考には十分に間に合い、比較的希望どおりの企業に内定をもらうことができているように見えました。
今の就職活動の仕組みだと、落ち込む時期と選考時期のピークが重なってしまうと、その後の選考の機会が少なくなるため、気持ちが復活したころには選択肢が一気に減ってしまいます。すぐに立ち直れる人はいいですが、そういう人ばかりではありません。そう考えると、早くに厳しい現実を知っておくことは、プラスの要素が強いかもしれません。
企業は大学での学びに疑心暗鬼
早期から活動している学生は、多くの社会人と触れる機会があるせいか、選考場面でも比較的堂々としている傾向がありました。学生によっては、社会人にフィードバックやアドバイスを受けたことで、自己分析や自己アピールの質が高くなっていました。また、多くの業界や仕事内容、企業の価値観、人、風土に触れているため、どういった会社が自分に合うかをなんとなくつかんでいる学生が多い印象を受けました。
それに比べ、遅れて活動した学生は周囲の内定に焦り、自分でも気づかないうちに内定を取ることが目的となっている場面をよく目にしました。これらのことからも、今の就活の仕組みの中でよりよい就活の可能性を高めるには、なるべく早くから就活をし、できる限り多くの企業に触れたほうが、メリットが多いように思います。
これに対し大学側の意見は微妙で、就活よりもできる限り大学での学びに集中してほしいと考えていると思います。しかし多くの企業の人事担当者は、大学での学びが、企業で求める能力や、ビジネスで活躍するために必要な能力を高めることに直結していないと思っているのが現実です。
当然、直結している部分もありますが、学生から話を聞く限り、大学や学部、指導教授によってその差はかなり大きいと思います。より早期に活躍できる人材を増やすことを考えれば、今後は大学と企業の間で連携し、大学の学びだけでは補えない能力開発を、企業の協力を得ながら行う仕組みづくりが必要になってくると感じています。その仕組みの1つとして期待されるのが、インターンシップになると考えています。
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