そうすると、3つ目の株高要因である(3)アメリカ経済・企業業績がより重要になる。筆者は、アメリカ経済は当面底堅さを保ち、2020年までに景気後退が始まるとは予想していない。
だが、貿易戦争の悪影響がこれから顕在化し、輸出や製造業の調整が長引くため、2019年後半からアメリカ経済は2%未満に緩やかに減速すると予想する。すでに金利が大きく低下していることは国内需要を支えるが、輸出や海外企業の売り上げ停滞が続くため、利下げによる効果は、ほぼ相殺されるとみる。
中国経済は2番底へ、日本株に期待できず
そして、世界経済全体への影響という意味でアメリカよりも重要なのは、米中貿易戦争に直面する中国である。2018年後半以降の拡張的な金融財政政策によって、中国経済は2019年春先に持ち直しの兆しがみられた。ただ、5月からの経済指標には再び中国経済が2番底に向かう兆しがみられる。
中国では、国内需要を刺激するインフラ投資や減税などのいくつかの政策対応が実現した。だが、自動車販売促進など期待された一部の政策は実現していない。そして、中央銀行は、利下げにまでは踏み出していない。これらの政策対応は不十分とみられ、2019年の中国経済が輸出や製造業の不振で減速するリスクは高まっている。
2016年には中国政府の景気刺激策で同国経済が持ち直し、その後世界経済は再加速した。筆者は当初、2019年も同様の展開を想定していたが、中国経済指標や当局の対応を踏まえると、こうしたシナリオの雲行きが怪しくなっている。
これまでの株高要因と最近の米中経済の情勢を踏まえると、7月に最高値を更新したアメリカ株市場は、市場心理が過度に楽観方向に傾きつつあるように、筆者にはみえる。
なお、アメリカ株が最高値を更新する中で、東証株価指数(TOPIX)など日本の主要株価指数は2018年初の高値から15%以上低い水準に止まっている。7月21日に開票が行われる参議院選挙後も、与野党の勢力図など、政治情勢は現在とほとんど変わらないだろう。政治的な安定は維持され、日米株価の格差は大幅に広がっていることもあり「日本株はかなり割安」との指摘もみられる。
だが、世界経済の緩やかな減速が続く中で、10月からの消費増税によって主要国で唯一緊縮財政が始まり、日銀の金融緩和政策は「機能不全」に陥ったままである。このため、日本経済の下振れリスクは大きく、投資対象として日本株には期待できない、と筆者は引き続き考えている。
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