前回のコラム「今のままでは大幅な円高ドル安になりかねない」では、
5月からFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利下げへの転換など、各国中央銀行の緩和スタンスが強まっていることを強調した。
米欧中銀のハト派姿勢は市場予想を上回る
その後、市場の想定を上回るペースで米欧中銀のハト派姿勢が強まっている。6月18日に、ECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ総裁は、今後の景気下振れリスクに応じて利下げを行う可能性だけではなく、量的金融緩和政策再開の可能性に言及した。6月理事会でフォワードガイダンス強化のみが決定された直後だっただけに、早々に利下げ再開に踏み出したのは意外だった。
ドラギ総裁の発言の2日後に結果が公表されたアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)において、FRBも市場の想定を上回る緩和強化姿勢を示した。政策金利は想定どおり据え置かれたが、FOMCメンバーの政策金利見通しにおいて、半数近い7人が年内0.5%の利下げを想定していることが判明。
筆者はこの中にジェローム・パウエル議長が含まれる可能性が高いと見ているが、3月までは金利据え置きを想定していた中立派メンバーの多くが、年内に1~2回の利下げを想定していることが明らかになった。
実は、FOMCメンバーの政策金利見通しこそ変わったが、2020年までの経済成長率、インフレ率の想定はほぼ変わっていない。米中貿易戦争の激化、インフレ期待の低下基調など、潜在的リスクへ対処するために、早期に複数回の利下げを行う必要があるとの考えが広がった。
ECB、FRBによる緩和姿勢の強化をうけて、アメリカの長期金利は2%を一時下回り、ドイツの長期金利も史上最低金利を下回り、-0.3%台まで低下する場面があった。
目先は、28~29日のG20で行われる見通しの米中首脳会談の結末が注目されている。これがどのような結果になっても、筆者はアメリカの中国に対する強硬な通商政策が続く可能性は高いとみており、関税引き上げが続くことを踏まえると、今後の世界経済に下押し圧力がかかるだろう。
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