50代から「幸福度」がゆるやかに増す根拠 「おっさん」「おばさん」の認識改めるべき
<中年に対する認識も、高齢者に対する認識も、誤ったものが多い。中年期に幸福度は下降するが、人生は50代で好転する。そして高齢者は、本当は生産性が高い>
「中年の危機」とは、30代後半から40代にかけてのうつ状態、いわゆるスランプ状態を指す。この言葉は1965年、カナダの心理学者エリオット・ジャックによって生み出されたが、それが実際に存在するのか、それとも神話にすぎないのかは長年議論になっており、科学的には実証されていなかった。
しかし、そのいわゆる「中年の危機」の後、つまり50代になってから幸福度が上がることが、2000年以降、経済学者らによって相次いで実証されている。30代、40代から幸福度は下降し、50代で底をつくが、それ以降は緩やかに上昇していき、U字曲線を描くのである。このU字曲線は世界中どの地域のどの国の人であっても共通しており、類人猿にすら見られる普遍的な現象だという。
これらの研究結果をベースに、なぜ30代、40代の働き盛りの世代は幸福感を得ることが難しく、逆に50代からなぜ幸福度が増していくかについて書かれた『ハピネス・カーブ――人生は50代で必ず好転する』(CCCメディアハウス)がアメリカで話題になっている。著者のジョナサン・ラウシュはジャーナリストであり、ブルッキングス研究所の研究者。「ハピネス・カーブ」は上述のU字曲線を指す言葉で、ラウシュによる造語だ。
中年がいつまでも満足できない理由
なぜU字曲線を描くのか。一般に30代半ばから40代は仕事が順調で、社会的に評価されるようになる時期だ。しかし、達成感を味わったのもつかの間、再び不満を感じてしまうのがこの中年期の特徴だといえる。
その理由は、「どれだけ野心をもっているか、どれほど競争に勝つことができるか、といった観点で自分に価値を見出す時期」(『ハピネス・カーブ』33ページ)であるからだとラウシュは述べる。つまり、目標や夢を達成しても、同僚や友人など周囲と自分を比較してしまうので、「自分はまだまだ」といつまでも満足感を満たすことができない。