原宿から生まれたフランス人インスタグラマー 無名の女の子が日本でフォロワー1万人超に
――それはよかった。
うん。前は自分の人生が終わるときは日本にいたいと思ってたの。今は日本にいたいというより、旦那といたい。もし急にフランスに戻らなきゃってなったら、一番つらいのは日本と離れることじゃなくて、彼と一緒にいることができないこと。
――本当に運命的だね。
うん、そんな感じする。
結婚後、すぐに叔母さんが亡くなったり、足をケガして手術をしたりと大変なことが続いたが、翌年2月にインスタグラムを始めてから、生活が少しずつ変わり始めた。どんどんフォロワーが増えて、仕事にも追い風が吹いた。
いま働いている原宿ファッションの先駆的ショップ「6%DOKIDOKI」は、「ここで働きたい!」と自らインスタでメッセージを送り、面接のチャンスを得た。もう1つ、竹下通りの店でアルバイトをしながら、マチルダさんのインスタを見たあるブランドからの依頼で、ファッションデザインの仕事も手がける。
350メートルのランウェイ
デザインの仕事は「うまくいけば、来年、もう少し増えるかもしれない」。事務所に所属してモデルの仕事もしたけど、マチルダさんの夢は、3歳の頃から変わっていない。
「できれば、自分のブランドを立ち上げたいです。ハンドメイドで、エコなブランド。日本の着物が好きで、原宿のファッションも好きだから、それを混ぜた感じのブランドを作りたくて、ちょっとずつ準備してます。1人だから大変だけど、家にいるときは、デザインを考えて、服を作ってストックしてます」
気づけば、カフェで話を聞き始めてから1時間が過ぎていた。会計をして、店を出てから、竹下通りで撮影をした。道行く人の多くが、彼女に視線を送る。
チラッといちべつする人もいれば、驚いたように凝視する人もいる。写真を撮ろうと、スマホを向ける外国人もいる。中学生ほどの若い女の子のグループは、わあ!と顔を輝かせた。その中を、彼女は真っすぐ前を向いてゆったりと歩く。
竹下通りの350メートルは、彼女にとってのランウェイだ。ファッションモデルが歩く舞台というより、英単語の「滑走路」という意味がしっくりくる。原宿に憧れて来日したマチルダさんが、竹下通りから空高く飛び立とうとしている。僕にはそう見えた。
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