アートで「美意識」を鍛えるための具体的方法 山口周さんのプログラムに同行してみた

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葉山に住んでいる山口さんは、地元の神奈川県立近代美術館葉山館のほか、仕事の合間に都心の美術館に足を運ぶ。最近ではムーミン展が印象に残ったそうだ。

作品を見るときの2つのポイント

東京国立近代美術館(写真:東京国立近代美術館提供)

では、美術館にあまり行ったことのない初心者は、どんなふうに作品を見ればいいのだろうか? 山口さんは2つのことを勧める。

「作品を見て、自分でタイトルを決める。それからキャプション(作品解説)を読んで作者と勝負する。オレのほうがいいタイトルだと思うのか、負けたと思うのか」。

これなら勝てる、と思うタイトルが浮かぶまで、キャプションは読まない。

もう1つは、人物などが描かれている絵を見る場合、「シャーロック・ホームズよろしく、この人物はこれから何をしようとしていて、どんなことが起こるかを考える。それからキャプションを読んでみる」。

アートの見方に正解はない。山口さんとともに講師を務めた東京国立近代美術館の一條彰子さんは、「解説を読んで、自分の解釈は間違っていたと思うのではなく、事実を知って少し修正して、これが自分の考えというところまで持っていければいいと思う。今まで、作品を見る前に解説を読んで、指差し確認するように鑑賞していた人に、そうではない見方があることを知ってもらえたら」と語る。

今回のプログラムは2万円という受講料にもかかわらず、30人の定員が半日で埋まった。今年度中にあと2回、開催される予定だ。美術の知識がない人も、普段は美術館に行かない人も、身ひとつで楽しめる。

実は東京国立近代美術館は、2003年から一般の来館者に向けて対話鑑賞を行い、ガイドスタッフの育成にも力を入れてきた。山口さんとのコラボの背景には、そうした実績がある。一般の来館者向けの対話鑑賞は、開館日は毎日午後2時から。申し込み不要で、一般500円の入館料しかかからない。一度参加してみてはいかがだろうか。

仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

週刊誌のカルチャーページの編集・執筆を経て、美術展、ラジオ、本などについて取材、執筆。全国の美術館と温泉をめぐり歩いている。

 

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