アートで「美意識」を鍛えるための具体的方法 山口周さんのプログラムに同行してみた

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同じ絵を見ているのに、注目しているところ、考えていることはずいぶん違う。

20分ほど話し合った後、ガイドスタッフが種明かしをした。野田英夫という画家が1937年に描いた「サーカス」という絵であること、野田はアメリカで生まれ、日本で教育を受け、30歳5カ月で亡くなったことなどが明かされた。それを受けて、また発言する人もいて、話は尽きない。

今回のテキスト(写真:東京国立近代美術館提供)

こうして各グループが1時間に3つの作品を対話鑑賞した。ガイドスタッフの1人、山本さゆりさんは、「みなさん深く切り込んで、どんどん作品の核心に迫っていくのが面白かった」と話す。普段は1つの作品を20分かけて見たり、何人もの意見を聞いたりする機会はなかなかない。

プログラムの後半は山口周さんによる講義だ。ビジネスパーソンにとってのアート鑑賞の意味、「見る力」「感じる力」「言葉にする力」「多様性を受け入れる力」「美意識」の鍛え方などについて、1時間ほど語った。

最後に各グループで感想を話し合い、質疑応答を経て3時間のプログラムが終了した。

プログラムを経て

参加者に感想を聞いてみると、

「普段は使わない場所の脳が使われてトレーニングになった。自分の考えを深めるのにも役立った」
「思わぬ解釈、意見、ものの見方があった。会社のメンバーと参加してみたい」
「1人2万円の参加費はちょっと高いかな。でも、同調圧力の強い日本では、あなたはAと思うけど私はBという対話をする訓練はあまりされていないから、小さいときからこういう体験ができるといい。相手の言っていることを否定しないって、家族でも難しいですよね」

などさまざまな声があった。

終了後、山口さんは、「みなさん活発な議論をしていましたね。美術館に慣れてもらうのが1つの目的です」と振り返った。

美術館は独特な空間だという。作品が持つ情報だけではなく、公共の場でありながら、広告があふれる電車の中などとは違って、人から説得されることがない。さらに天井が高く、広く、静か。そういう空間に身を置くだけでも意味がある。

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