ダメ社員から人気作家になった41歳男の大逆転 作家・大橋弘祐はなぜ37歳から花開いたか
「会社の研修でグループディスカッションを行ったんです。就活のそれと一緒で、面接官がいるなか討論をして、なんとなくそれっぽいことを言って、活躍している雰囲気を出さなければいけません。上司にも『頑張れよ!』って送り出されて、うまくいけば昇進できるという場でした。
実際、僕は『〇〇さんの意見に賛成ですが、こういう改善をするとよりよくなります!』というのような、いかにもグループディスカッションで評価されるための言葉を口にして、その場をなんとかやり過ごしました。
でも、自分の心の中にない言葉を発したせいか、帰りのバスの中で、どっと疲れて心が泣いている感じがしたんです。そのとき『ああ、俺はもうこの仕事は続けられないんだな』って思いました」
ちょうどその頃、5年を費やして書き続けた原稿は、完成の兆しが見えていた。小説を書くことはつらくもあったが楽しかった。なによりそこには、自分の意思と反する言葉は1つもなかった。
完成した小説は、水野氏らが新たに立ち上げた出版社・文響社から刊行されることが決まる。それが、『サバイバル・ウェディング』だ。
「作家だけで食べていくのは難しいだろうと思ったので、編集者の仕事もしながら、執筆活動をしていくことに決めました」
大橋さんはすぐに編集者としても才能を発揮。それが累計39万部を突破した『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください』だ。
「5年かけた小説よりも、短期で作り上げたビジネス本のほうが売れるっていう……(笑)。でも本を作る過程で共通しているのは楽しいっていうこと。なんだ仕事って楽しいじゃん!と社会人になってやっと思えました」