ダメ社員から人気作家になった41歳男の大逆転 作家・大橋弘祐はなぜ37歳から花開いたか
「いい大学に入って、いい企業に勤めることこそが幸せだ……という価値観の中で育ったので、ブログがうまくいったくらいで、会社を辞めて別のことに挑戦しようという気持ちにはなれませんでした。僕の肌に合わなかっただけで、勤めていた会社は福利厚生や待遇も充実していて当時から文句のない超ホワイト企業だったので、なおさら決断できませんでしたね」
どこかで辞めるキッカケを探しつつも、見つからないまま数年が過ぎた。しかし30代に突入し、現在も師と仰ぐ人物と出会ったことで人生が変わったという。
ベストセラー作家・水野敬也との出会い
作家デビューを果たす37歳まで、大手通信会社の一社員としてくすぶっていた大橋弘祐さん。その人生を変えたのは、現在もともに奮闘する1人の先輩作家との出会いだった。
モヤモヤした気持ちを抱えつつ、合コン必勝ブログを書き続けた大橋さん。知人から誘われ、小説『夢をかなえるゾウ』の作者・水野敬也氏のもとで「ベストセラー作家を目指す」という、現代版トキワ荘のような私塾に入るキッカケを得る。
これが人生のターニングポイントとなった。
「僕、本を全然読まなかったので、そんな人間が小説を書こうとするなんて、いま考えても無謀ですよね。もちろんすぐにうまくいくこともなく、その私塾に5人ほど集まったメンバーの誰も本を出版する機会を得ることなく、ただパソコンのキーボードを叩きまくる“謎の集団”である時期がしばらく続きました(笑)」
平日は会社員をしていたため、仕事終わりと日曜日に参加し、執筆活動に勤しんだ。カレーを作ってメンバーみんなで食事を共にしたり、完成した原稿を読み合うなど、アットホームな場ではあったが、創作活動は苦しく、納得のいくものはなかなか書けなかったという。
「水野さんから、『大橋は恋愛が得意だから、恋愛モノを書いたらどうか』と勧められて恋愛小説を書き始めました。合コンに行っていただけで、恋愛はまったく得意ではないんですけど(笑)。しかも何を思ったのか、主人公を女性にしてしまったので、男の僕にとって女性の心理はわからないことも多くて、本当に苦労しました」
苦心して作り上げた最初の小説。完成するまでには、5年の歳月を要した。
しかし、その期間を経たことで、大橋さんのなかに徐々に会社を辞めるという決意が芽生えていく。決定打となったのは、会社の研修を受けに行ったときの体験だった。