熊本県の温泉郷で「地獄を見た」3兄弟の奮闘 「熊本で最も最悪な土地」の復興を目指して
3年前に初めて「青風荘」を訪ねた。泥に覆われ巨大な岩に視界を遮られ、歴史ある建物が無残に崩れかけている様子に絶句した。自慢の大浴場は屋根が落ち膝の高さまでの泥に覆われた。場所によっては人の背丈ほどの高さまでの土砂が堆積し手のつけようがなかった。土石流の威力が恐ろしかった。それでも河津兄弟は前を向いた。たくさんのボランティアが、かろうじて残された建物の泥かきをした。
そして今、2020年春の開業を目指し再建作業が進む。
目の前の景色は災害の結果ではない
料理人で三男の進さんは初めての取材でこう言った。「堀さん、しっかり撮ってください。目の前の景色は災害の結果ではない。僕らの始まりです。起点をしっかり記録してください」。崩落した山、寸断された道、泥にまみれた母屋。目を背けず撮ってよかった。それは今、本当に起点だったんだと思えるから。
南阿蘇村の山間部にある「青風荘」。再建への道のりは一山越えまた一山。地震で道路が寸断されしばらく重機も入れられなかった。人件費や資材の高騰を理由に建設会社から計画の見直しを求められることも。経営を担う次男の謙二さん「ブレない。最高の宿をつくるのが待ってくれている皆さんへの責任」。