不良は当然、やしろさんの漫画にも口を出してきた。
「『俺を殺したらただじゃおかねえぞ!!』って脅されました。『もっと俺をかっこよく描け』『エミネムのTシャツを着せろ』とか、すごい細かく指示してくるんです。不良が担当編集みたいになっていました(笑)。
結局、不良を優勝させるしかなくなり、不良がヘリコプターに乗って全員を撃ち殺して終わるという、散々なオチになってしまいました。まるで『不良打ち切り』ですね」
中学3年からは学校に復帰し、補習、補講を受けて無事卒業した。
そして高校へ進学した。
「当時は電車通学に憧れてました。かっこいいなって。なので母に無理を言って、家から離れた学校を選びました。でも実際に通ってみたら、すごいつらかったです。毎日電車乗るの、だるすぎました」
高校1年の中盤から、不登校になった。
学校に行くふりをして家を出るのだが、ネットカフェに入ってネットゲームをしていた。
「昼食は母親に作ってもらったお弁当を食べたいんですが、ネットカフェ内で食べると怒られるんですよ。だからお弁当を食べるときだけ、外に出て公園に行きました」
ホームレスの人たちからいろいろ学んだ
やしろさんが通っていたネットカフェは、日雇い労働者が集まる、いわゆるドヤ街と呼ばれる場所の近くにあった。
やしろさんがお弁当を食べるために立ち寄った公園には、ホームレスのおじさんたちがたくさんいた。その中で1人弁当を食べた。
「1年以上そうやって公園でお弁当を食べていました。毎日ホームレスのオジサンたちとしゃべっていたので仲良くなりました。彼らからはいろいろ学びましたね。
だいたいの人は酒と女で失敗してるんだな、とか。たまに株で失敗した人もいるんだ……とか。中には『俺はFBIだ!』とか言う人もいました。誘われてドヤ(簡易宿泊所)に泊まったこともあります。すごい汚くてビックリしました。浴場に行ったら、じいさんがキレてるし……。ある意味楽しかったですね」
いつものようにお弁当を食べていると、ホームレスのおじいさんに、
「こんなところで親の弁当食べてるんじゃねえよ! お前は俺らが戻りたくても戻れないところにいるんだから頑張れよ。全員がうらやましいと思う生活をしてるんだ!!」
と、説教された。
「叱られて、確かにそのとおりだと思いました。そして心機一転、高校2年からまた学校に行き始めました。
ホームレスの皆さんと過ごした経験は、今でも生かされてると思います」
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