被雇用者の自由選択法案、日本企業が脅えるオバマ“新法案”の影響


 米国には、全米自動車労組(UAW)という自動車産業を統括する労組が存在する。日本自動車部品工業会の河島哲則・北米事務所代表は、法案成立への危機意識をあらわにしたうえで、「米国と日本の労組は同じ視点で見てはいけない」と違いを強調する。

実際、UAWの労使交渉における強硬さは有名だ。退職者の家族の健康保険料を全額負担させる、一時解雇中の労働者の給与の9割を保証させるなど、日本では考えられない破格の待遇を企業にのませ、膨大な企業負担を発生させてきた。こうしたことから、米自動車大手3社(ビッグスリー)の経営危機の“犯人”とも名指しされている。

河島氏も部品メーカーの米国支社勤務時代に抗争した経験を持つ。当時、UAWは1年半もの長期に及ぶストライキを決行しており、同氏はその間、外出するたびにUAWの旗を掲げた労働者に取り囲まれた。「子供を守るため、ボディガードをつけて通学させた」(同氏)。

現時点では、自動車関係の日本企業の製造拠点にUAWに加盟する労組が結成された事例は少ない。それは日本企業がUAWの影響の少ない南部に工場を建てたり、工場労働者と定期的に交流の場を設けるなど、周到な対策を施してきたからだ。

だが、同法案が成立すれば、労組が結成される可能性が高まり、UAWによる組織化が進むことで、一段とその脅威が増す。そうした労組からの好待遇を要求する圧力が高まるだけでなく、強硬なストライキによって、現地企業のオペレーションそのものが大きく揺さぶられるリスクもはらんでいる。

早ければ2月にも議会に法案提出

米国企業や自治体の間では、すでに法案への反対運動が盛り上がっている。今年1月にはルイジアナ州、ネバダ州など、10州の知事が議会の上層部に共同で意見書を提出。「容易な労組結成によって米国内企業の競争力を衰えさせてはいけない」と法案廃止を訴えた。

だが法案成立を見越した“組合活動”も静かに始まっている。現地関係者によれば、08年後半から一部の日系自動車企業の労働者に対して、UAW関係者が労組結成に向けた署名集めを行っているという。トヨタ自動車の北米部門の幹部は「法案はオバマ政権下での重大な関心事」と事態を注視する。また部品会社の中にも、管理者クラスに向けて、労組結成を阻止するための研修を施す企業が出てきている。

同法案は早ければ2月にも議会の俎上に載せられる。米国の自動車市場が未曾有の縮小傾向にある中、労組問題とどう向き合うか。日本の自動車業界にとって、また一つ頭痛の種が増えかねない。

(西澤佑介 =週刊東洋経済)

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