時給「1000円ぽっち」払えない企業は潰れていい 日商「最低賃金アップ反対論」は国益に反する
そもそも、仮に日本の最低賃金が1000円になったとしても、国際的に見るとその水準は非常に低いレベルでしかありません。購買力調整をしても、その結論は変わりません。
「日本人の技術はすばらしい」「日本人の労働者は勤勉だ」「手先が器用」「人材評価は非常に高い」「職人気質」。
そんな日本人の労働者の質の高さを自慢する声は、今でもそこら中から聞こえてきます。
もちろん日本商工会議所も発言源の1つです。
「最低賃金1000円」を払えない人に経営者の資格はない
そんなに働いている人の自慢をするのなら、労働者に対して適切な対価を払うべきです。たかだか1000円の最低賃金が払えないというのは、大きな矛盾です。
そもそも、最低賃金が1000円になったとして、年間の労働時間が2000時間だとすると、年収はたかだか200万円です。以前の記事でもご紹介しましたが、日本人の労働者の質は世界的にも大変高く評価されています。そんな質の高い人間を雇う賃金がたったの200万円という、このことの異常さを看過してはいけません。
とくにこれからの40年間は、高齢者が増える一方です。その間、生産年齢人口の人たちは、自分の生活費のみならず、高齢者の年金・介護・医療費も負担しなくてはいけません。その金額はどんなに安く見積もっても、高齢者1人当たり、生涯で6000万円になります。
今後、生産年齢人口は減りますが高齢者は減らないため、1人の高齢者を支える現役世代の数は次第に1人に近づいていきます。年収200万円で40年間働いても賃金総額は8000万円にしかならないのに、6000万円負担するというのは、どうやっても計算が合いません。
一方、すべての中小企業を守るべきだという意見には説得力がありません。日本では、多くの中小企業で経営者が公私混同を繰り返し、法人税は払わない、従業員にはまっとうな給料を払わないという、蛮行が横行しています。
中小企業の多くは、法人税を払わないことを「技術」、払うのは「バカ」と考えているようです。法人税を払わない、払ったことすらない中小企業の割合を見れば、その傲慢さがわかります。「優秀な人材をできるだけ安く、多く働かせることが社長の腕の見せどころだ」とうそぶく社長も数多くいます。
彼らの蛮行により、所得税も消費税も、本来支払われる額よりずっと少なくなってしまっています。彼らを守ることは、国全体にとってなんらメリットがないのです。
断言しますが、時給1000円の最低賃金も支払えないような企業の経営者には、会社を経営する才能も能力もありません。無能です。自分で作った商品をそこまで安売りしないと買ってもらえないならば、そんな会社は倒産したほうがマシです。
過激な物言いに聞こえるかもしれませんが、これは正論です。なぜかというと、人手不足だからです。
日本には世界的にも名の通った立派な会社がたくさんあります。それらの企業はもちろん、国に大きな利益をもたらしています。そういう国益に貢献している企業でさえ、今後は人手不足に苦しむことが容易に予想されているのが現実です。
ですから、1000円の最低賃金すら支払えないような企業で働いている労働力は、早期に解放してもらい、より生産性の高い企業に移ってもらったほうが、国全体にとってもプラスですし、働いている人たちのためにもなります。
これは誰の目から見ても明らかに経済合理性のある政策ですが、これを実行されると、困る人たちがいます。それが社長たちです。日本商工会議所が最低賃金の引き上げに反対しているのは、中小企業の社長たちの声を代弁しているからです。
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