クラウドソーシングで生活する「若者の実情」 シェアハウスに住み、食事は肉じゃがの一択

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トモヒサさんの暮らしぶりは堅実だ。シェアハウスでは、備品補充といった管理業務も担っているので、本来、家賃2万円のところ、半額の1万円で済んでいる。携帯は格安SIMで、利用料は毎月2000円。1カ月の支出は、食費やコワーキングスペースの利用料などを含め、6万円以内に収めている。また、国民年金の免除申請も、税金の青色申告申請もすでに済ませるなど、使える制度を周到に活用している。

家計に余裕があるときは、都内で開かれる、フリーランサーやウェブライターを対象にしたセミナーに参加。帰り際に食べるチェーン店の牛丼が、たまのぜいたくだという。

諦めてみれば、楽しく生きていける

「ミニマリストのブログに影響を受けました」とトモヒサさん。ミニマリストとは、現代的な意味合いにおいては、必要最低限の持ち物だけで生活をする人のことを指す。

「無駄なものを捨てたら、心にも余裕ができました。消費や欲望を我慢して、意味あるのかって思われるかもしれないですが、俺の場合、やってみると、そうでもなかった。諦めてみれば、楽しく生きていける。今、満足度は高いです」

ウェブライターと、取材記者という違いはあるが、トモヒサさんと私は同業者でもある。彼の記事は、いずれも読みやすかった。あるクラウドソーシングサイトの自己紹介ページで、評価が満点の「☆5」だったのも、納得できる。

一方で、私が気になったのは、クラウドソーシングサイトの発注者に、“身元不詳”が少なくないことだ。クラウドソーシングは基本的に誰でも受発注者になることができ、両者のやり取りはメール。このため、過去には素性のわからない発注者が「嫌韓・嫌中などの記事」「共産党に票を入れる人は反日という記事」など差別的、あるいは極端に偏った内容の執筆依頼をしていたことが発覚したこともある。

これに対するトモヒサさんの持論はこうだ。

「稼ぐことが最優先なので、発注者が誰かまでは正直、考えたことがありません。それに、ネットである以上、フェイクやデマは防ぎようがない。でも、そういう質の低い記事は淘汰されます。ウソを書かれたり、傷つけられた側はどうするか、ですか? 自分でSNSで(反論を)拡散したり、裁判を起こしたりするしかないのかなと思います」

私は、「適正な働き方」という観点から、発注者の身元を明らかにさせることはもちろん、クラウドソーシングサイトの運営には、一定の規制を設ける必要があると考えている。

次ページ中には雇用と変わらない「名ばかり事業主」も
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