クラウドソーシングで生活する「若者の実情」 シェアハウスに住み、食事は肉じゃがの一択

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記事は、ウェブサイト上のページが開かれた回数「PV(ページビュー)」や、サイトを訪れた人が1ページ目を読んだだけで離れてしまう「直帰率」、商品購入や会員登録につながった「コンバージョン率」などで評価されるという。

これらの数値がライター側に直接伝えられることはないが、「継続して発注があれば、クライアントに満足してもらえているということ」。トモヒサさんは多いときで6、7カ所と契約をしているという。

食費を1日600円と決めているため、夕食のメニューは、鶏むね肉で作った肉じゃが“一択”だという(筆者撮影)

トモヒサさんは記事を書くのに必要な情報もネットで集めるので、基本的に終日、パソコンに向かう。昼食は、70~80円に値引き販売されたメロンパンやアンパンなどの菓子パン。夕方、歩いて数分のところにあるシェアハウスへと帰宅する。夕食のメニューは、鶏むね肉で作った肉じゃが“一択”だという。

「毎日同じ料理だと、食材が余らないので効率がいい。朝ごはんも肉じゃがです。時々、納豆や卵を食べれば、栄養的にも問題ありません。食費は1日600円と決めています」

「自分で稼げるスキルを身に付けよう」

出身大学は、就職に強いことでも知られる都内の理工系の学校。トモヒサさん自身、IT関連企業への就職も可能だったという。しかし、あるNPO法人が主催するイベントで「好きなことをしながら稼ぐフリーランス」という選択があることを知ったことがきっかけで、方針を転換。会社勤務などを経ない「新卒フリーランス」として働くことを決めた。

「最近は“売り手市場”なんていわれますが、大手企業は依然として狭き門です。かといって中小にはブラック企業も少なくない。どっちにしても、過労死とか、40代で希望退職とか、そんなニュースを聞いていると、会社に入っても中流層になるのも難しそうだな、と。だったら、自分で稼げるスキルを身に付けようと思ったんです」

母親の再婚相手である継父との関係がこじれていたので、実家はできるだけ早く出るつもりだった。千葉県に、クラウドソーシング手数料の一部負担といった助成をしている自治体があることを知り、移住先に選んだ。文章を書くことが好きで、学生時代からウェブライターの仕事をしていたので、卒業後にそれを本業にしたのだという。

「会社員の父からは『大学まで出したのに』と嫌味を言われましたし、親戚には、いくらフリーランスだと説明しても、『フリーター?』と言われてしまいます。(中高年世代にとっては)やっぱり『会社勤めをして一人前の社会人』なんですよね」と苦笑いする。

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