25歳で巨人1軍出場を掴んだ男と妻の下克上物語 異色の経歴を歩んだ徳島出身の増田大輝選手

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プロ野球選手と言っても、育成選手は3桁の背番号を背負い、1軍の試合に出られるわけではない。増田選手の年俸は最低保障額の240万円。

それでもスタートラインに立てたことが、何より嬉しかった。まずは支配下選手への昇格を目指して。2人の下克上が始まった。

優香さんと離れて暮らすことになった増田選手は、手厚いサポートを受けながら、努力を惜しまなかった。

そして、2年目の2017年7月28日、支配下選手への昇格が決まった。そこには万感の想いが込められていた。

「ありがとう」

「俺の方こそありがとう」

夫婦の電話には、感謝の言葉と優香さんの涙が溢れていた。

優香さんの夢を叶えるために

優香さんを、ほんとうの「プロ野球選手の奥さん」にするために――。

2019年、増田選手は飛躍を遂げている。

2軍では打率.347をマークし、出塁率、盗塁数、四球数は昇格時点でリーグトップ。そして4月19日、増田選手はついに1軍の舞台に立った。

甲子園での阪神戦、8回裏のことだった。坂本勇人選手に代わり、守備固めでショートのポジションに就いた増田選手に、早速見せ場が訪れる。一死2塁の場面、2塁走者の糸井嘉男選手は2016年に盗塁王に輝いた俊足だ。4番の大山悠輔選手が放った打球は、左中間のフェンスに直撃する。打球の行方を見てからスタートを切った糸井選手は楽々ホームイン。

かと思いきや、本塁でタッチアウト。なんと、中継プレーに入った増田選手が強肩を発揮し、キャッチャーにストライク送球をしたのだ。試合後、球場内の通路に現れた原辰徳監督が「素晴らしいデビューだったよ」と、指揮官自ら讃えるほどの、ビッグプレーだった。

その後も、チームトップクラスの守備力を買われて、増田選手は着実に出番を増やしている。スタメン出場は5月5日の1試合のみ(6月23日現在)ながら、代走や守備固めとしてチームに欠かせない選手だ。課題のバッティングに磨きをかければ、レギュラー奪取もそう遠くないはずだ。

最下層から這い上がってきた男、増田選手の下克上物語は、まだまだ始まったばかりだ。優香さんの手厚いサポートはこれからも続く。

(構成=中村翔)

「プロ野球選手の妻たち」(TBSテレビ、次回は6月26日(水)夜7時~放送、地域によって放送時間は一部異なる)。 野球を諦めた金髪フリーターを甦らせプロ野球選手へと導いた肝っ玉の年上妻!!
TBSテレビ『プロ野球選手の妻たち』取材班
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