それでも「日経平均は7月以降急落」と見る理由 「虫の良すぎる市場」はいずれ修正を迫られる

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しかし、述べたように、企業心理の冷え込みはほぼ世界的なものであり、中国のみならず世界的な設備投資・建設投資が一段と減退し、それが日本からの設備機械、建設機械や、それを支える機械部品、電子部品の輸出をさらに圧迫して、日本の生産水準が全般に一層押し下げられる、という展開が「これから」進展するという不安がぬぐえない。

今の状況は「2016年」と似ている?

実は、過去の世界経済の動向を概観すると、足元と極めて似た局面があった。それは2016年だ。

2009年は、前年秋のリーマン・ブラザーズの倒産に象徴される「リーマンショック」が起こり、世界全体の経済成長は、翌2010年に実質マイナスに落ち込んだ。結果として、設備投資、住宅投資などの投資の合計額も、同年は前年比マイナスだった。

これに対して2016年は、世界全体の実質経済成長率は、前後の年よりも低くはあったが、しっかりとしたプラス成長であり、「伸び悩み」にとどまった。ところが、その年の投資の合計額は、前年比で減少した。この両者の動きの違いは、投資は企業経営者などの人間の判断によるところにある。

2016年は、年初から株価が下落し、先行きに対する不透明感が広がった。また6月にはブレグジットを決定した国民投票が行われ、欧州経済の先行きを悲観視する向きが多くなった。このため、結果として終わってみれば、世界経済は大きく悪くなることはなかったが、「大きく悪くなるのではないか」と企業が考え、設備投資や建設投資が圧迫されたわけだ。

今年も、世界全体の実質経済成長率がマイナスを記録する、というほどの落ち込みはみせないが、「投資の合計額は減少する」、という事態に陥り、それが「日本からの設備関連製品の輸出押し下げ→日本の製造業中心に収益環境悪化」、という展開になると懸念している。

こうした実態悪に対して、現在の主要国の株価は、また過度の楽観論に走っている。アメリカのS&P500指数は、終値ベースで20日(木)に史上最高値を更新した。こうした同国株価全般の強調展開が日本株についても支援材料となり、日経平均株価は2万1000円超での滞空時間が長くなっている。

結果として、筆者が予想してきたような、大幅な株価下落が実現するのに時間がかかっている。このため、すでに過去の当コラムで述べたように、年初時点では年央辺り(6~7月)と見込んでいた、日経平均が1万6000円に達する想定時期を、7~9月と当初よりも後ろに修正している。当コラムの読者の皆様には、ご心配、ご迷惑をおかけし大変心苦しく感じている。

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