トランプ大統領の敵は中国でもイランでもない

米中貿易戦争やイラン攻撃の裏にある「真実」

この微妙なバランスの中、トランプ大統領本人は、中国・イラン問題をどう選挙で有利に使うのだろうか。トランプ大統領は、タカ派外交が必要になるとペンス副大統領やボルトン氏を巧みに使いながら、自分自身は翌日には「どうなるか見てみよう」などといい、常に他人事のような発言をする。

これは、結果が悪く出た場合に備えたトランプ流のヘッジだろう。そんな中、イランへの軍事行動は、アメリカ国民の心の傷となったイラク戦争を敢えてあぶり出す巧妙な選挙戦略も感じられる。

民主党バイデン氏に残る「傷跡」、予備選で早期撤退も

まず整理すると、今アメリカは7つの国と交戦状態が続いているといってよい(アフガニスタン・イラク・シリア・イエメン・ソマリア・ナイジェリア・リビア)。21日、トランプ大統領は、いったん許可したイラン攻撃命令を直前で取りやめる「トランプ流」を断行したが、ここでイランと戦闘状態になった場合、困惑するのは、実は大統領選で最もトランプ大統領の強敵とされるバイデン候補だろう。

なぜなら、民主党予備選の鍵を握る若者は、2003年のイラク戦争はアメリカの汚点だったと考えている。バイデン候補はあの戦争に賛成票を投じた一人だ。

一方、当時は下院議員だったバーニー・サンダース候補は反対票を投じた。この違いは予備選の討論会では必ず持ち出される。さらにバイデン氏は息子がビジネスで中国マネーと深いつながりがあるが、ここで民主党の選挙序盤の雰囲気を言うと、個人的には支持率でトップを走るバイデン候補は、予備選が始まれば早期に撤退すると予想している。

理由は、これらの負の遺産に加え、中絶での長年のスタンスを変え、完全に中絶を擁護するフリップフロップ(ドタバタ、思考回路の変更の意)をしてしまったことだ。経済政策は状況に応じて臨機応変に変えるのは構わない。

だが、バイデン氏ほどの大ベテランが、政治信条を場当たり的に変えるのは逆効果だろう。これでは欧州議会選挙でも確認された、「中道の衰退」の渦に飲み込まれる。結果、最終的には、バーニー・サンダース候補とエリザベス・ウォーレン候補の争いに、若いピート・ブティジェッジ氏(インディアナ州サウスベンド市長)が絡む展開を予想している。

ただ、若者中心に強い支持基盤を持つサンダース候補はあまりにも実直過ぎる。トランプ大統領が、共和党系シオニストが主流の有力ロビー団体であるAIPAC(アメリカイスラエル公共問題委員会)を頼りにしているのに対し、サンダース候補は、より広範囲でよりリベラルなユダヤ系AJC(アメリカユダヤ人協会)の集会に、主要な民主党大統領候補者で一人だけ参加しなかった。

近代のアメリカ大統領で、ユダヤ系ロビー勢力を特別扱いしなかったのは、筆者の記憶ではパパブッシュが最後だ。自分自身がユダヤ系でありながら、アメリカ最強のユダヤ系ロビー団体を敵にするのはあまりにも蛮勇。早すぎる予想を承知でいうと、民主党の予備選を勝ち抜くのはウォーレン氏ではないか。

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